研究領域 | 生殖系列の世代サイクルとエピゲノムネットワーク |
研究課題/領域番号 |
20062013
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
阿部 訓也 独立行政法人理化学研究所, 動物変異動態解析技術開発チーム, チームリーダー (40240915)
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研究分担者 |
杉本 道彦 独立行政法人理化学研究所, 動物変異動態解析技術開発チーム, 開発研究員 (10373317)
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キーワード | 始原生殖細胞 / ゲノム再プログラム化 / エピジェネティクス / DNAメチル化 / 遺伝子発現 / 細胞分化 / 幹細胞 |
研究概要 |
哺乳類生殖系列細胞は、初期胚に存在する多能性細胞から派生し、ゲノムの再プログラム化というエピジェネテイックなゲノム再編や減数分裂を経た後に、配偶子となり次世代へと遺伝情報を伝えていく。この世代サイクルにおけるゲノムの維持、再編、多様化という生物学的に重要な現象の解明を目指し、これまで、内部細胞塊、エピブラストなどの胚性未分化細胞、始原生殖細胞(PGC)の発生過程における全遺伝子の発現プロファイル動態の解析を実施してきた。今年度はその発現制御に関わる、哺乳類における代表的なエピジェネティック修飾であるゲノムDNAのメチル化パターンを微量細胞で解析する技術の確立を行い、これを用いて発生過程におけるエピゲノム動態の変化を追究することを行った。具体的には胚性幹細胞(ES細胞)や胚性生殖細胞(EG細胞)等の胚あるいは生殖細胞由来の幹細胞に加えて、胎生10.5日から17.5日までの胚から単離した始原生殖細胞を対象として、マウス7番染色体とX染色体上のほぼすべてのCCGGサイトのメチル化状態の解析を行った。その結果、ゲノム再プログラム化の過程にあるPGCでは、他の細胞タイプと大きく異なり、ゲノムの大部分が低メチル化状態にあるが、雄PGCのDNAのメチル化パターンは、胎生14.5日~17.5日のステージでに大きく変化することが明らかとなった。また、各細胞タイプのDNAのメチル化を比較した結果、X染色体上の分節的重複(segmental duplication)を示す広いゲノム領域(10数Kb~数Mb)が、PGCや精巣、精原細胞などの生殖系列細胞で低メチル化状態にあることを見出した。この領域近傍には生殖細胞特異的な発現を示す遺伝子群が存在しており、領域単位のDNAメチル化によりこれらの遺伝子の発現が制御されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、ゲノム細胞化がおきる以前の胎生10.5日から出生直前の17.5日まで、雌雄分けて始原生殖細胞を単離し、解析する計画を立て、その通りに実施できている。実際は、それ以前のステージや出生後の生殖細胞の解析も開始することができている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、マイクロアレイを用いて2本の染色体に関してDNAメチル化解析を行った。来年度は、アレイから次世代シーケンサーによる解析にシフトし、ゲノム全体のメチル化状態をより詳細に解析していく。また、遺伝子発現データも同時に取得し、遺伝子発現とDNAメチル化の関係を情報学的に解析し、この細胞系譜における発生プログラムの転換点の特定とその制御機構解明を目指した研究を実施する。
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