研究領域 | 生殖系列の世代サイクルとエピゲノムネットワーク |
研究課題/領域番号 |
20062014
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
古関 明彦 独立行政法人理化学研究所, 免疫器官形成研究グループ, グループディレクター (40225446)
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キーワード | マウス / 減数分裂 / HP1γ / セントロメア / ヘテロクロマチン / ヒストン修飾 / ポリコーム群 |
研究概要 |
セントロメアは、有糸分裂だけでなく減数分裂にあたっても重要な機能を果たす。減数分裂前期における相同染色体同士のペアリングは、セントロメアあるいは傍セントロメアヘテロクロマチン(PCH)の会合を介して開始されると考えられている。この会合が十分におこらないと、それに引き続く対合と組み換えもおこらないことがヒストンH3K9トリメチル化酵素であるSuvh1/h2欠損マウスを用いた解析から示された。このことから、PCHにおけるH3K9トリメチル化は、ペアリングに必須であることが示された。しかしながら、H3K9トリメチル化がどのように読み取られるのかは未知であった。ヘテロクロマチンタンパク-1(HP1γ)は、体細胞セントロメアのヘテロクロマチン領域に局在するタンパクとして同定されたものであるが、減数分裂前期を通じてもPCHに局在する。HP1γを欠損したマウスは雌雄ともに不妊となるが、その過程ではパキテン期における不十分な対合や異常な対合がおこる。また、HP1γはヒストンH3K9のトリメチル化を認識し、それをH3K9ジメチル化に変換するのに必要なことが明らかになった。H3K9のトリメチル化がおこらない変異マウスでもジメチル化がおこらない変異マウスにおいても、HP1γを欠損したマウスと同様の表現型が見られたことから、H3K9トリメチル化->HP1γ->H3K9ジメチル化が引き続いておこるカスケードが、染色体の正常な対合の維持に必要であることが明らかになった。また、HP1γと複合体を構成するポリコーム群タンパクであるRing1ファミリーをノックアウトしたところ、HP1γと同様な対合の異常が惹起される事が示された。しかしながら、ここでは、顕著なセントロメアの異常は観察されなかった。一方、ポリコム群のひとつであるEnhancer of Polycomb-1(Epc1)を欠損したマウスの解析から、円形精子細胞でおこるヒストンの高アセチル化は、ヒストンからTPへの置換に必須の過程であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度HP1γノックアウトの論文については発表した。Enhancer of polycombについては、現在論文執筆中であり、Ring1ファミリーの機能については、重要な観察について終了している。
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今後の研究の推進方策 |
Epcタンパクについては、ES細胞を用いて、その機能発現メカニズムについて解析を行っていく。Ring1ファミリータンパクについては、減数分裂期の機能について、精母細胞を用いた解析をおこなっていく。いずれのプロジェクトについても、特に問題はない。
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