精子形成過程におこる性染色体(XY体)でおこるピストンH2Aモノユビキチン化などから、ポリコーム群タンパクは、精子形成過程でも重要な役割を果たすと考えられてきたが、まだ実験的な証明は与えられていない。Stra8-CREを用いて、Ring1ファミリーを精母細胞特異的にノックアウトしたところ、HP1γと同様な対合の異常が惹起される事が示された。しかしながら、XY体でおこるピストンH2Aモノユビキチン化は正常であること、顕著なセントロメアの異常は伴わないことが示された。しかしながら、テロメアの核膜への結合が障害されることが示された。このことは、テロメアとセントロメアは、異なるメカニズムを介して、相同染色体のペアリングを促進することを示している。 別のクラスのポリコム群であるEnhancer of Polycomb-1(Epc1)を欠損したマウスの解析から、Epc1は円形精子細胞でおこるピストンの高アセチル化と、それに引き続くピストンからTPへの置換に必須の過程であることを明らかにした。この過程でEpc1は、ヒストンアセチル化酵素のひとつであるTip60のコファクターとして作用することを、Tip60との共局在とTip60ノックアウトマウスにおける表現型の相同性から結論づけた。すなわち、円形精子細胞でおこるピストンの高アセチル化は、酵母で見出されたpiccolo複合体のホモログによって媒介されることを示した。
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