本研究計画は、帝国論が世界的に隆盛を見ていることを背景とし、近年ユーラシアで台頭しつつある地域大国が歴史的に何らかの形で帝国との関わりを持っていることに着目して構想された。中心的な研究目的は、ユーラシアの近代諸帝国史を実証的に研究したうえで、帝国的な過去が現在の地域大国の政治体制や世界認識、自己表象などにどのような影響を与えているか、また各時代の「帝国」的国際秩序の中で個々の帝国や地域大国がどのような位置づけにあるかを究明し、歴史的視点に基づく国家論を構築することである。具体的な検討課題は、以下の3点である。 (1)諸帝国が近代という時代にどう適応しようとし、どのような過程を経て崩壊したかを比較する。そしてその経験や記憶がどのような今日的意味を持つかを考察する。 (2)帝国の崩壊後に後継国が帝国の遺産と新しい国家原理の双方に基づく国家建設を行ったことが、今日の地域大国の力の基盤になっていると見て、その過程を比較する。 (3)世界システムの中でさまざまな時代の帝国・地域大国が持つ地位と役割を検討し、帝国と国民国家の関係を考察する。
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