(1)本研究計画の目的 本研究の目的は、インド、ロシア、中国の3国をユーラシアにおいて一定の影響力を及ぼす「地域大国」と設定し、これらの国家の「大国」たるゆえんを、特にディアスポラ、様々なネットワーク、マイノリティなど社会の諸側面から考察することにある。ディアスポラやマイノリティなどは、大国にとって「周縁」の存在であるが、本研究は、それがかえって大国の輪郭を浮き彫りにしていることに着目し、国家の輪郭を超え、それに挑戦する様々な共同体のあり方を通して、地域大国像を照射することは地域大国論において重要な研究手法であるとの認識に立っている。国家の枠組みを超越することが、かえって国家を際立たせ、地域大国像の本質に迫ることができると考えるためである。さらに、インド、ロシア、中国の3国をこのような視点から比較検討することは、国家像の再検討に迫るものと確信している。 (2)本研究の進め方 そこで本研究では、ネイションと宗教の相互関係やその変容、ディアスポラとそのネットワーク、あるいは国家のマイノリティ問題に見られる国民統合の問題を研究テーマに設定し、これにより、地域大国及びその周縁で発生する民族問題や紛争について、新たな知見を提供することを目的として研究を進めている。研究はまず実地調査と内外の研究者との連携の実践により地域大国論に関する議論を深め、本プロジェクトの他の研究グループとの共同による国際シンポジウムやセミナー、研究会等を開催することによって、異なるディシプリンの研究者の融合による地域大国像の解明に努める。
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