研究概要 |
1. I型クラスレートの熱伝導率がゲストの電荷に如何に依存するかを調べるためにK^+_8Ga_8Sn_<38>単結晶を育成した。分裂サイトを占めるBa^<2+>とは異なりK^+はカゴの中心に位置し, その熱伝導率は結晶的であることを見出した。強磁性を示すEu_8Ga_<16> Sn_<30>の電気抵抗と磁化がキュリー温度36K以下の24K付近で異常を示すことを見出し, ラットリングの影響による非一様な強磁性状態の可能性を指摘した。 2. 近藤格子系強磁性体SmFe_4P_<12>の強磁場dHvA効果の34Tまでの測定によって新たなブランチの観測に成功し, そのサイクロトロン有効質量が22Tで発現するメタ磁性転移付近まで増大することを見いだした。Pr充填スクッテルダイト化合物超伝導体PrPt_4Ge_12の^<73> Geを用いた結晶育成に成功し, ^<73> Ge-NQR測定からPrのラットリングと超伝導について研究した。 3. ラットリング物質である充填スクッテルダイト化合物の新物質探索を行い, EuFe_4As_<12>, EuRu_4As_<12>, EuOs_4As_<12>の3つの超高圧合成に成功した。これらの化合物の電気抵抗, 磁化率, 磁化過程の測定により, EuFe4As_<12>, は152K, EuOs 4As_<12>は25Kでそれぞれ強磁性的な転移を示すことを見出した。一方, EuRu_4As_<12>は2Kの低温まで相転移による異常は示さず, 常磁性状態に留まることを見出した。 4. ラットリングを示さないとされているCe_3Pd_<20>Si_6の物性報告が試料に依存することに注目し, 熱処理条件の異なる多結晶試料と無処理の単結晶試料の低温比熱を比較した。比熱の結果は結晶組成に非常に敏感であり, 単結晶であっても熱処理をしていない試料は固有の物性を示さないことから, 熱処理条件が試料依存性をもたらしていることを明らかにした。熱処理をした単結晶を用いて, 改めてラットリングの有無を調べる必要があると指摘した。
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