研究分担者 |
鈴木 孝至 広島大学, 先端物質科学研究科, 教授 (00192617)
宇田川 眞行 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (70144889)
岩佐 和晃 東北大学, 理学研究科, 准教授 (00275009)
李 哲虎 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 主任研究員 (80358358)
筒井 智嗣 財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門非弾性散乱チーム, 副主幹研究員 (70360823)
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研究概要 |
カゴ状物質におけるゲスト原子の巨大振幅局所原子振動は、高温の熱伝導率抑制や低温の量子トンネリング現象と関係しているとされ、この本質を解明することは基礎科学のみならず応用においても極めて重要である。本研究では様々な分光学的手法により、以下の研究成果を得た。(1)藤:単結晶試料Ba_8Ga_<30>Sn_<16>のNMR実験に成功し非中心振動で緩和率の異常を観測した。1-2-20型カゴ状物質のNMRより、協力的ヤンテラー効果による構造相転移の可能性を指摘した。(2)鈴木:Sr_8Ga_<15>Si_<30-x>Ge_xにおいて,超音波弾性率C_<44>のソフト化がゲスト原子の非中心振動に起因することを明らかにした。CeRu_2Al_<10>の超音波実験では、相転移が電荷等の全対称表現が関与する秩序である可能性を指摘した。1-2-20型カゴ状物質の超音波測定から構造相転移がバンドヤンテラー効果に起因することを明らかにし、PrIr_2Zn_<20>の0.11Kの相転移が反強四極子秩序であることを明らかにした。(3)宇田川:ラマン散乱実験によりBa_8Ga_<16>Ge_<30>における格子熱伝導率の抑制は非中心距離と関係していることを明らかにし,非中心による電気双極子相亙作用の大きさを実験的に評価した。一方,Ba_8Ga_<16>Sn_<30>では,非中心回転運動だけで,量子トンネル効果は生じていないことを得た。(4)筒井:Eu_3Pd_<20>Ge_6においてEuの価数が結晶学的サイトごとに揺動していることを明らかにし、また、宇田川とともにYB_6の超伝導がYの非調和振動モードである可能性を見いだした。(5)李:クラスレートにおいて中心振動ではフラットフォノン分散を観測し、非中心振動では電子一格子相互作用に起因する波数依存性をもつフォノン分散を観測した。(6)岩佐:スクッテルダイトRT_4Sb_<12>(R=Ce,Pr及びT=Ru,Os)におけるR原子振動を観測し、非調和的振動に関しキャリアーの違いの観点から整理を試みた。また筒井らとともにGdB_6のX線非弾性散乱実験より、Gdイオンモードと他の自由度(Gd磁気モーメントおよび伝導電子)との強い結合が存在する可能性を指摘した。
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