研究領域 | 重い電子系の形成と秩序化 |
研究課題/領域番号 |
20102005
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤 秀樹 神戸大学, 理学研究科, 教授 (60295467)
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研究分担者 |
鈴木 孝至 広島大学, 先端物質科学研究科, 教授 (00192617)
宇田川 眞行 広島大学, 総合化学研究科, 教授 (70144889)
岩佐 和晃 東北大学, 理学研究科, 准教授 (00275009)
李 哲虎 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 主任研究員 (80358358)
筒井 智嗣 財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門非弾性散乱チーム, 副主幹研究員 (70360823)
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キーワード | 強相関電子系 / 大振幅非調和格子振動 / 低温物性 / 重い電子系 / 超伝導 / NMR測定 / 弾性的性質 / 非弾性散乱測定 |
研究概要 |
カゴ状物質におけるゲスト原子のラットリング振動は、高温の熱伝導率抑制や低温の量子トンネリング現象と関係しており、これを明らかにすることは基礎科学のみならず応用においても極めて重要である。本研究ではカゴ状物質について以下の研究成果を得た。(1)I型クラスレート化合物のNMR実験より、非中心ラットリング振動とカゴ形状の相関を見いだし、極低温でトンネリング状態を示唆するkHz程度の揺らぎを観測した(藤)。中性子散乱実験より低温でソフト化する強い非調和性を観測し、ゲスト原子可動長が大きくなるほど、ゲスト・モードのエネルギーが低下することを見いだした(李)。(2)LaT_2Zn_<20>(T=Ru,Ir)のNMRより、構造転移がZn(16c)イオンのラットリング転移であることを明らかにした(藤)。超音波実験により、PrT_2Zn_<20>(T=Ru,Rh)では多極子秩序を明らかにするとともに、両物質においてラットリングに起因した超音波分散を見いだした(鈴木)。ラマン散乱実験からはPrRu_2Zn_<20>は構造異常を伴う可能性を明らかにした(宇田川)。(3)RRu_2Al_<10>と(R=Ce,La)のラマン散乱実験より相転移に構造異常を伴わないことを明らかにした(宇田川)。超音波実験ではNdRu_2Al_<10>の逐次相転移について、二次のCDW転移とヒステリシスを伴う反強磁性転移を発見した(鈴木)。(4)ヘキサボライド系では、ラマン散乱により室温で正方晶にあるYB_6が500℃で立方晶に変わる構造相転移を初めて発見した(宇田川)。またDyB_6のX線非弾性散乱実験も実施し、希土類イオン振動モードが極めて強い非調性とソフト化を示すことを明らかにするとともに、第1原理計算との比較から、電子-格子相互作用の解明の道筋を見出した(岩佐・宇田川・筒井)。RFe_4P_12では、EXAFSによりにおいてゲスト・サイトのアインシュタイン温度がゲスト原子可動長と相関があることを見いだした(筒井)。また、X線非弾性散乱によりKOs_2O_6の超伝導や電子の有効質量増大がゲスト・モードT_<1u>の非調和性である可能性を見出した(筒井)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究では、昨年3月の東日本大震災により、分担者の東北大・岩佐および産業技術総合研究所・李の所属する機関ならびに、中性子実験のための原子力研究開発機構の施設(原子炉 JRR-3および加速器中性子源J-PARC)が多大なる影響を受け、研究の遅れが懸念された。復旧に最善を尽くし、研究機関内の測定系は9月には8割程度まで回復するに至った。一方、原子炉については現在停止中であるが、国外の原子炉施設などを利用することにより、研究の遅れを補完した。また、中性子関連以外の研究手法については、当初の計画について、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
代表者、分担者は得意とするエネルギー領域の分光学的研究の成果について情報交換を行い、有機的な組織化を図ってきた。「ラットリング物質の創製」班,「秩序相」班,「理論班」と連携して、ラットリング機構解明を目指す。R-1-2-20系で見られるラットリング転移について、NMR、超音波、ラマン散乱、放射光実験、および復旧しつつある加速器中性子実験(J-PARC)と連携して解明する予定である。本年度は、最終年度であり、それぞれの研究手法よりえられた、カゴ状物質のラットリング特性について総括する。
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