研究領域 | 高温高圧中性子実験で拓く地球の物質科学 |
研究課題/領域番号 |
20103002
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
永井 隆哉 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (20243131)
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研究分担者 |
赤坂 正秀 島根大学, 総合理工学部, 教授 (20202509)
深澤 裕 日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (30370464)
佐野 亜沙美 日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究員 (30547104)
内海 渉 日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究推進室長代理 (60193918)
栗林 貴弘 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (20302086)
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キーワード | 含水鉱物 / 高温高圧 / 中性子回折 / 結晶構造 / 水素結合 / 強誘電体氷 / Hydrous wadsleyite |
研究概要 |
1.Mg(OD)2の高温下での中性子回折実験を米国オークリッジ国立研究所で行った。その結果、水素結合の存在する層間の負の熱膨張と、水素の熱振動の非常に大きな異方性が示された。これは脱水前駆現象のメカニズムを特定する上で重要である。 2.含重水素合成紅簾石の赤外線分光分析により、これまで熱水合成した試料の重水素の一部が水素に置換されていることが判明した。そこで、二重カプセルの材質と組み合わせを変更することにより、ほぼ重水素のみを含む紅簾石の合成に成功した。これにより、酸素分圧を制御した環境で重水素を含む含水ケイ酸塩鉱物の熱水合成法を確立できた。また、本合成試料の中性子回折測定を行い、重水素の一部が水素に置換された合成試料であってもリートベルト解析により重水素の位置が決定できたことから、新たな合成試料においては、より正確に重水素の位置が決定できると考えられる。 3.Hydrous wadsleyiteについて、放射光による単結晶X線法により精密な結晶構造の解析を行い、中性子回折実験の結果と組み合わせることで、水素位置の精密化に成功し、学術論文として公表した。また、高圧下その場単結晶X線回折実験を行い、これまで曖昧であった高圧構造相転移を7GPa付近で確認し、ラマン分光の結果と組み合わせることで構造相転移後の水素位置のモデル構築に成功した。 4.天王星、海王星、冥王星等と同じ温度条件下で、氷結晶中の水素が自発的に揃う様子を中性子回折実験で初めて観測した。水分子の水素は正の電荷を帯びているので、これが揃うと氷自体が正負に分極して強誘電体になるため、惑星内部に強誘電体の氷が存在することを示唆する。 5.高圧中性子ビームラインPLANETに設置した大型高圧発生装置の性能テスト、高圧セルの開発を行い、本実験の準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
震災の影響で、茨城県東海村J-PARCに建設していた高圧中性子ビームラインPLANETの完成が遅延したため、予定していたビームラインでの本格的な高温高圧中性子回折実験を年度内に始めることができなかった。しかし海外の原子炉中性子施設などを利用して実施可能な中性子回折実験で、予想外の興味深い予察的な結果が得られており、来年度での挽回を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
茨城県東海村J-PARCに建設していた高圧中性子ビームラインPLANETが完成し、ビームラインの立ち上げが始められている。しかしながら当初予定よりもビームタイムが制限される見込みなので、ピンポイントで測定条件を絞り込む予備実験を進め、本格的な実験が可能になり次第、迅速に実験に取り掛かりたい。
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