研究領域 | 高温高圧中性子実験で拓く地球の物質科学 |
研究課題/領域番号 |
20103005
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
飯高 敏晃 独立行政法人理化学研究所, 戎崎計算宇宙物理研究室, 専任研究員 (60212700)
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研究分担者 |
池田 隆司 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム物性制御・解析技術研究ユニット, 研究主幹 (60370350)
土屋 旬 愛媛大学, 上級研究員センター, 講師 (00527608)
星 健夫 鳥取大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (80272384)
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キーワード | 高圧力 / 中性子散乱 / 液体 / 含水鉱物 / マグマ / ナノダイアモンド / 第一原理分子動力学 / 水素結合 |
研究概要 |
高圧下での水・液体、含水鉱物、マグマおよびその他の水素含有物質の物性を明らかにするための第一原理物質科学計算を行った。またそのための大規模シミュレーション手法の開発を行った。 水素結合中のプロトンダイナミクスは、鉱物はもちろん、多くの化学系、生命系における基礎過程である。我々は氷高圧相(IceVII)のプロトン電気伝導度の圧力依存性を、イオン欠陥と回転欠陥の非平衡統計力学、および酸素原子と水素原子の分子動力学計算の二つ方法を用いて考察した。その結果、プロトン伝導度の圧力依存性におけるピーク、IceVIIの「プラスティック相」から「結晶相」への遷移、X線回折パターンの異常、X線励起による(H2)(02)結晶の生成などの現象を統一的に議論する視点を得た。 高温高圧水の特異な動的性質に由来すると考えられる、実験で観測されているラマン散乱スペクトルの変角振動ピークの消失を第一原理分子動力学を用いて再現した。第一原理電子状態計算法により蛇紋石(Antigorite,Lizardite)の高圧下での構造と弾性を明らかにした。第一原理Peierls-Nabarro-Galerkinモデルに基づき計算を行い、含水wadsleyiteの流動特性に関し3つの主要なすべり系において、無水wadsleyiteの結果と比較してパイエルスポテンシャルが顕著に低くなることを確認した。ナノ多結晶ダイヤモンド形成の中心課題である、sp2-sp3混合超大規模系(10nmスケール系)に適した並列計算手法および、ナノドメイン解析を行う独自の理論と原子構造可視化ソフトを開発した。その他に高圧中性子実験と関連して、高い超伝導転移温度を持つカルシウム水素化物の高圧相を予測した。液体ガリウムの高圧下の構造と物性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
氷高圧相のプロトンダイナミクスの基礎過程とその影響を明らかにできた。高温高圧水の物理的・化学的性質の理論的解明に進展がみられた。蛇紋石および含水リングウッダイトの高圧下での構造と弾性、含水wadsleyiteの流動特性、新しいオーダーN電子状態計算法、独自の原子構造可視化ソフトなどにおいて進展がみられた。マグマの研究は、ターゲットを絞る段階で時間をとっている。
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今後の研究の推進方策 |
氷高圧相のプロトンダイナミクスの基礎過程とその影響をさらに詳細に評価し、各種実験結果と比較する。高温高圧水の振動スペクトルの解析を継続し、ピーク消失の原因を明らかにする。既に得られた大規模計算手法と解析手法とを組み合わせて、ナノダイアモンド系のsp2-sp3混合超大規模系研究を行う。これまでの成果をまとめ含水鉱物の構造と物性の全体像を明らかにする。 さらに、平成24年度に実験班が開始予定の中性子実験に関する理論的なサポートを行う。
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