研究領域 | 半導体における動的相関電子系の光科学 |
研究課題/領域番号 |
20104005
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
野村 晋太郎 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90271527)
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研究分担者 |
山口 真澄 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子電子物性研究部, 主任研究員 (80393817)
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キーワード | 量子井戸 / 多体量子相関効果 |
研究概要 |
(i)ゲート付き非ドープ量子井戸構造試料を対象にmK領域での極低温、5T以下の磁場領域において、低キャリア密度で特に電子間相互作用と電子-正孔間相互作用の高い条件のもとで、高分解能円偏光分解発光測定を行った。その結果、電子占有数v=1/3近傍において初めて明確に分離された複数の発光微細構造を観測した。特にその中で、ν≧1/3にはっきり見られ、ν<1/3または0.7K以上の高温で消失する発光ピークを観測した。これは、三重項分数荷電準励起子に準電子が結合した分数荷電準励起子からの発光であると考えられる。また、σ+発光においても電子占有数に依存した強い発光が観測された、これはスピン反転した準電子のかかわる分数荷電準励起子であると考えられる。 (ii)強磁場中量子ホール状態にある二次元電子系の端には電子間相互作用と閉じ込めポテンシャルにより、電子密度が一定でフェルミ面にギャップの存在する非圧縮性液体と、電子密度が空間的に滑らかに変化する圧縮性液体が交互に存在するとされている。しかしながら、多くの試みにも関わらず、圧縮性液体と非圧縮性液体の空間分布は明解ではなかった。本研究では、mK領域での極低温、強磁場領域においてにおいて近接場顕微鏡を用いた空間マッピング測定を行った。準共鳴光励起により、局所的に任意の余剰エネルギーの光生成キャリアを半導体ヘテロ接合試料中二次元平面内に生成する手法を編み出した。この手法により世界に先駆けて、二次元電子系端状態の圧縮性/非圧縮性液体によるポテンシャル分布を反映したマップ図を得ることに成功した。 (iii)高品質シリコン量子構造からの発光の励起強度依存性、温度依存性を詳細に調べた。時間分解発光測定を実施し、シリコン層の厚さが薄くなる程、発光寿命が短くなることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、電子占有数ν=1/3近傍に予期しなかった明確に分離された複数の発光微細構造を世界に先駆けて初めて観測した。このことが、分数荷電準励起子状態の理解の進展に大きく貢献した。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画にそって、高品質半導体試料のmK領域での極低温、強磁場領域における光学特性を調べ、基底平衡状態のみに着目した研究では見過ごされてきた動的相関効果の解明を行い、新しい光技術の開拓を推進する。
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