研究実績の概要 |
(i) ゲート付非ドープ量子井戸を用いた分数電荷準粒子解明:ν= 1/3近傍のσ-円偏光発光に、明確に分離された4―5つの発光ピークを初めて観測した。その内の一つは準電子励起の存在するν≧1/3においてのみ観測され、また別のピークは準正孔励起の存在するν≦1/3においてのみ観測された。観測結果は厳密対角化に基づく数値計算結果と比較され、分数荷電準励起子であることが示された。 (ii) 電子-電子間、電子-正孔間相関効果制御によるスピン分裂の解明:B<1 Tの低磁場・低電子密度領域において発光ピークエネルギーから電子-正孔有効g因子を決定し、有効g因子がν偶数で極小、ν奇数で極大となる振動することを見いだした。ν=5, 7において観測された有効g因子の電子密度依存性は自己無道着ボルン近似の理論で良く説明され、電子間交換相互作用による増大が観測されたと結論付けられた。 (iii) 荷電励起子と二次元電子系のクロスオーバーに関する研究:電子密度の増加に伴う二次元電子系の遮蔽長の減少と、荷電励起子中の電子-正孔間のクーロン引力の遮蔽に伴う荷電励起子半径増大との対応関係を明らかにし、遮蔽長が荷電励起子半径とほぼ一致する電子密度を境にして荷電励起子状態と二次元電子ガス正孔状態がクロスオーバーすることを見出した。 (iv) 二次元電子系端状態の局所光励起:極低温中近接場光学顕微鏡を用いて、二次元電子系端状態を極低温において局所的に共鳴/準共鳴光励起し、非平衡キャリアの振る舞いを調べた。試料端に光生成された電子の拡散過程が共鳴条件と電子占有数に応じて変わる様子を空間マッピングにより明らかにした。
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