研究領域 | 半導体における動的相関電子系の光科学 |
研究課題/領域番号 |
20104007
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
芦田 昌明 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 教授 (60240818)
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研究分担者 |
田中 耕一郎 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 教授 (90212034)
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キーワード | テラヘルツ / 強相関電子系 / 酸化物 / 高密度光励起 / 光誘起相転移 / 光物性 / 空気プラズマ / シンクロトロン |
研究概要 |
本研究では、基底状態においても電子相関が強く一体近似が成立しない新規絶縁体材料において、光励起によって生成される電子正孔多体系のダイナミクス、特に、励起状態に固有の相関効果「動的相関」による秩序形成、即ち光誘起超伝導転移、絶縁体-金属転移など、電子状態の光誘起相転移のダイナミクスの解明を行うことを目的としている。このため、磁気励起や超伝導ギャップなど秩序を直接反映する構造が存在するエネルギー領域であるテラヘルツ域を含む赤外全域をカバーする独自の時間領域分光を開発してきた。既に定常スペクトルの観測域としては世界最高帯域を達成していたが、今年度は励起状態の観測を容易に雰る超広帯域赤外パルス波の高強度化を完成した。即ち、媒質の吸収による欠落帯がなく広帯域化が容易な上、損傷閾値が高いため高強度化にも有利な空気プラズマを用いる赤外パルス発生法を用いて、サブテラヘルツから近赤外域の200THzに及ぶ周波数領域を完全に切れ目なくカバーすることに初めて成功した。ここで鍵となったのは、パルス幅35fs程度のチタンサファイア再生増幅器からの出力光のサブ10fsへのパルス圧縮の安定的な達成であった。さらに、その超短パルスとその二倍高調波の光混合過程を赤外パルス波発生に用いることで、実験上避けられないパルス広がりの影響に大きな影響を受けず広帯域化が可能であることを示し、本手法の汎用性を確認した。 一方、分子研UVSOR施設のシンクロトロン放射とフェムト秒レーザーを組み合わせることにより、高強度テラヘルツパルス波の発生方法として注目されている、コヒーレントシンクロトロン放射の電場形状を初めて測定した。さらに、入射フェムト秒レーザーのパルス形状を変化させることにより、発生パルスの電場形状を制御できることも確認した。UVSORによる光電子分光や結晶構造観測と組み合わせて、高強度テラヘルツ波照射による光誘起相の研究に展開することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AO3班内での共同研究において、各々が独自に有する広帯域測定と高強度テラヘルツ波発生の先端技術を組み合わせることによって独創的な成果を上げることに成功し、それを主要ジャーナルに掲載した。また、広帯域化の完成により、種々の酸化物絶縁体やナノ材料に適用を開始し、新たな班内共同研究を立ち上げた。
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今後の研究の推進方策 |
世界最高帯域を有する超広帯域赤外時間領域分光法を用いて、引き続き新規絶縁体材料の時間分解分光を進める。今年度購入予定のテラヘルツエアフォトニクス検出器を用いて、これまでの広帯域化を検出過程においても完全なものとし、高温超伝導体やマルチフェロイックス酸化物の光誘起相転移を、可視、赤外ラェムト秒パルス照射によって生じさせ、広帯域赤外過渡吸収スペクトルの測定を行う。また、グループ間の議論の機会を増やして、班内外の共同研究を促進する。
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