研究概要 |
半導体中の電子励起多体状態と光子場との結合系を対象とし,動的電子相関効果を取り入れた量子光学応答理論を構築する。それをレーザー発振や自然放出過程に適用することによって,従来の現象論や自由電子近似に代わる新しい半導体レーザー理論体系を整備する。同時に,非平衡定常状態での多粒子系の量子応答理論の定式化と深化に寄与し,電子-正孔-フォノン系と電子-正孔-フォノン-光子系での量子コヒーレンス形成の類似と相違を明らかにし,動的電子相関を用いて物質コヒーレンスと光コヒーレンスを制御・設計するための指導原理を確立する。 そのために,(1)準静的性質:準熱平衡状態にある電子正孔系での動的電子相関効果を微視的に考究して,反転分布状態の量子・熱揺らぎ特性や光学利得発生および自然放出機構を明らかにし,(2)動的性質:光励起法および電流注入法によって生成される非平衡定常状態にある反転分布とそこでの量子多体相関と量子凝縮の形成・崩壊ダイナミクスを追跡し,(3)光の性質:反転分布と混成した共振器光子場および外部出力光子場の量子コヒーレンスと揺らぎ・雑音特性を解明する,という3項目の研究目標を定める。これらを統合して,反転分布状態の動的電子相関効果を取り入れ,励起子モット転移~励起子量子凝縮~ポラリトン量子凝縮~レーザー発振を統一的に記述しうるような一電子近似を超えた量子光学応答理論を,実験結果と照らし合わせながら構築する。
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