電子と正孔が同数共存する系の熱平衡状態は、物性物理学の縮図と言える程の多様性を示すことが理論的に予言されている。実際、励起子気体相(低密度かつ低温)と電子正孔プラズマ相(高温または高密度)の間には励起子モット転移があり、極低温では量子凝縮が起き、励起子BEC(励起子のボーズ凝縮)、電子正孔BCS(電子正孔クーパー対の凝縮)相が現れる。この系は、相関効果や多体効果を考察する絶好の理論研究の舞台を与えるだけでなく、半導体レーザーをはじめとする応用面においても重要である。そこで、旧来の摂動論を越え、相関効果まで考慮した半定量的な理論の構築を目指す。 また、アンバランスな電子正孔二層系で起こる新奇な量子凝縮相、セミメタルと半導体の中間に位置しているDirac電子系(グラフェンやカーボンナノチューブ系)の光学応答に対する相互作用効果、電子正孔系との関連が深い多軌道ハバードモデルといった新しいテーマの開拓にも取り組む。
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