研究領域 | 素核宇宙融合による計算科学に基づいた重層的物質構造の解明 |
研究課題/領域番号 |
20105002
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大野木 哲也 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70211802)
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研究分担者 |
蔵増 嘉伸 筑波大学, 数理物質科学研究科, 准教授 (30280506)
山田 憲和 高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (50399432)
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キーワード | 格子QCD / 真空構造 / ハドロン / フレーバー / 計算機シミュレーション |
研究概要 |
格子QCDの真空構造とハドロンの性質について以下の研究を行った。 まず、大野木を含むJLQCD collaborationは厳密なカイラル対称性をもつ格子QCD計算をさらに発展させ、暗黒物質の探索レートの予言に重要な核子のσ項の精密決定を行った。この研究は以前に行ったFeynman-Hellman定理を用いた方法とは独立で、直接にストレンジクォークの核子内でのスカラー凝縮の遷移行列を求めたもので、核子のstrange quark contentが小さいことを決定づける研究である。その他にK中間子の形状因子、N=1の超対称ゲージ理論のカイラル凝縮の初期的研究も行った。 山田は早川らとSchrodinger Functional schemeによる10-フレーバーのSU(3)ゲージ理論のゲージ結合定数の繰り込み群の研究を行った。結果として、この理論において赤外固定点が存在することをしめした。これはヒッグスの複合模型の構築に重要な発見である。 蔵増を含むPACS-CS Collaboration Wilsonフェルミオンを用いて、物理的質量直上での現実的格子QCD計算を通じた、さまざまなハドロン物理の研究を行った。まず2+1フレーバーQCDにおけるρ中間子の崩壊の第一原理計算を行った。また、チャームクォークの入った中間子であるチャーモニウムの質量スペクトルやD中間子の質量スペクトルおよび崩壊定数について現在の格子QCDの技術を用いて実験データを精密に再現できることを示した。核子2体の束縛状態(deuteron)の研究も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
厳密なカイラル対称性を用いた格子QCD計算(JLQCD)、物理点直上での格子QCD計算(PACS-CS)ともに計算の基礎付けの段階を完全に終了し、本格的な応用が始まっている。K中間子、σ項など素粒子物理への応用、ハドロンの崩壊や束縛状態などQCDと原子核理論を直接結びつける第一原理計算の展開が達成され、順調に成果が挙っている。
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今後の研究の推進方策 |
JLQCDはKEKに新しい計算機が導入されて、PACS-CSも京コンピューターを用いた計算が開始しつつある。これまで積み重ねてきた研究を生かして、これまでより20倍以上大きな計算リソースをもとに大きな飛躍が期待できる。 JLQCDはB-factory実験を念頭にフレーバー物理(重いクォークの物理、核子の電気双極子能率など)の探求、PACS-CSはK中間子の2体崩壊とQCDからの原子核の直接計算を本格的に推進する。
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