過去数年間に、素粒子論と原子核論の分野において、真空と物質のクォーク構造の理解に向けた確実な進歩が生まれつつある。 素粒子論においては、クォークの真空偏極を考慮した格子QCD計算(いわゆるフルQCD計算)が大きく進歩し、体積(6fm)^3かつ物理的クォーク質量での計算が手の届く範囲に見えてきた。一方、原子核論においては、現実的核力を用いた核子多体系の厳密計算が可能になりつつある。また、原子核構造論の基礎である核力を格子QCD計算から理論的に導出する道が、本計画研究のメンバーである初田、青木、石井により拓かれ、格子QCD計算による軽い原子核の直接計算の第一歩も藏増らにより踏み出されている。 このように、これまで別々に研究されていた隣接する階層の物理が計算科学の進歩により融合し統一的に研究できる可能性が、本計画研究に参加する研究者の貢献により拓けてきている。 本計画研究では、フルQCD計算により、核力やバリオン間相互作用の全解明を目指すとともに、その結果に基いた大規模数値計算により原子核構造論、ハイパー核構造論、中性子星内部の高密度物質の構造論を系統的に展開する。
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