研究領域 | 素核宇宙融合による計算科学に基づいた重層的物質構造の解明 |
研究課題/領域番号 |
20105004
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
鈴木 英之 東京理科大学, 理工学部, 教授 (90211987)
|
研究分担者 |
柴田 大 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (80252576)
梅田 秀之 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (60447357)
梶野 敏貴 国立天文台, 理論研究部, 准教授 (20169444)
住吉 光介 沼津工業高等専門学校, 教養科, 教授 (30280720)
|
キーワード | 超新星爆発 / ニュートリノ / 状態方程式 / ブラックホール / 中性子星 / 重力波 / 元素合成 / ニュートリノ振動 |
研究概要 |
23年度は以下のような研究を行うとともに、12月に研究会を共催し、関係研究者との連携を推し進めた。 柴田を中心にして、等質量の中性子星(各々太陽の1.3~1.6倍程度)を用意し、有限温度の状態方程式とニュートリノ輻射効果を取り入れた数値シミュレーションを世界で初めて実行し、ダイナミクスとニュートリノ放射を詳しく調べた。 梅田、吉田(PD)は回転効果を含む大質量星の進化計算コードの開発を進め、重力崩壊型超新星となる下限質量近くの星の進化計算に適応した。また、特殊相対論的多次元流体コードを大北と開発し、それを用いてGRBジェットやNiを大量に放出するする巨大質量星の超新星爆発のシミュレーションを行った。 梶野を中心に、テンソル力の効果により中性子過剰核の構造を系統的に説明できるハミルトニアンを用いて電子捕獲率とベータ崩壊半減期を計算し、超新星r過程元素合成に応用して元素組成の特徴を明らかにした。相対論的平均場の理論を用いて核子とハイペロンを考慮した原始中性子星の状態方程式を作り、超強磁場下でのバリオン・ニュートリノ吸収および散乱断面積に現れるパリティーの破れの効果が、パルサーキック速度を説明できることを示した。 住吉はShenらとともに相対論的平均場理論に基づく超新星コアでの状態方程式データテーブルの拡張を行った。また住吉、鈴木は山田や鷹野らと共同して、核種混在の統計平衡モデルによる状態方程式の作成と、クラスター変分法による核物質の状態方程式を作成するプロジェクトを進め、温度0の非一様相についてトーマス・フェルミ計算によって相図を作成することができた。石塚(PD)を中心に状態方程式データベースの開発を開始し、骨格部分が完成した。また中里と共同で、ブラックホールが形成される場合について、ニュートリノ輻射流体計算によってダイナミクスおよびニュートリノシグナルへのエキゾチック物質の影響を総合的に明らかにした。 住吉、山田は3次元ニュートリノ輻射輸送に関してボルツマン方程式を解く計算コードを完成させて、それを変形した超新星コアの例に適用し、3次元計算コードが(近似計算にはできない)優れた記述能力を持つ事を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全く対称性を仮定しない数値相対論による中性子星合体などの数値シミュレーションに、現実的な状態方程式を組み合わせ、さらにニュートリノ放出過程までを近似的に取り込むなどこれまで不可能であったことが可能になり、また3次元ニュートリノ輸送計算コードも骨格部分が完成するなど、世界をリードするような成果が得られている。一方、現実的な核力モデルをベースにした状態方程式テーブル作成プロジェクトと、回転星の進化計算コードの開発は進展しつつもまだ完成には至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
現実的なミクロ過程を考慮した数値相対論と三次元ニュートリノ輸送計算コードを用いた数値シミュレーションは、我々が世界的にも先端を行く分野であるので、引き続き重点的に研究を進める。また今年度は最終年度であるので、回転星の進化計算コードを改良し赤色巨星段階にも対応させて超新星爆発に至る進化計算を行うとともに、理研RIBFの最新実験結果を用いた元素合成計算、クラスター変分法に基づく状態方程式テーブルの作成と状態方程式データベースの公開を目指す。
|