研究概要 |
本研究は、2つの表面間の相互作用の距離依存性を直接評価できる表面力測定を中心手段とし、分子認識など、固-液界面における分子膜の特性を明らかにし、ソフト界面の分子科学に寄与することを目的とし、さらに、生体分子間の相互作用、医用材料表面の評価を可能とする方法論の開発を目指す。具体的には、遺伝情報転写に関わるタンパク質群、および糖などの生体機能分子を対象とし、様々な生体分子の配向制御した固定化法の開発、DNAの転写制御に関与するタンパク質群の相互作用の直接測定、また表面における水和構造の評価を行う。さらに、領域内の他の研究者の扱う高分子ブラシ層ならびに分子認識系の評価を行い、その特性を明らかにし、ソフト界面の分子科学の確立に資する。 平成22年度は、枯草菌の胞子形成過程で機能するホスホリレーシグナル伝達系に関与するタンパク質を表面に配向固定化し、相互作用力の直接測定を行った。胞子形成時に機能するホスホリレーシグナル伝達系は、ATPにより自己リン酸化したKinAが、リン酸基をSpoOF以下他のシグナルタンパク質へ伝達し胞子形成遺伝子群の発現を誘導するプロセスである。本研究では、KlnAとSpoOFをそれぞれ表面に配向固定化し、KinA-SpoOF間相互作用Mg^<2+>およびCa^<2+>存在下でコロイドブローブ原子間力顕微鏡(AFM)法により直接測定し、2価イオンの効果を検討した、2価陽イオンを含まない溶液中ではATPを添加しても特異的相互作用は観察されなかったが、Mg^<2+>とCa^<2+>を含む溶液中では、ATPの添加後に接着力が観察された,従って、KinAとSpoOF間には、ATPとMg^<2+>とCa^<2+>の共存下で特異的な相互作用が働くことがわかった。
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