本研究では、生体分子認識部位を有する分子と非特異吸着抑制分子とで構成する複合単分子層の機能発現と、機能界面の新規評価法を提案し、これを実現することを目指している。昨年度までに、非特異吸着分子の改良、新規作製と膜構築への利用、レクチン(タンパク質)認識膜表面の緻密さの評価、膜構造とレクチン認識効果の変化について詳細に検討した。今年度は、糖鎖分子を、電気化学活性機能を有する分子により表面上で分散させ、タンパク質(レクチン)の認識について予備的な検討を行った。この電気化学活性を有する分子自身にはタンパク質等が非特異的に吸着を起こすことはないことを確認の後、各種割合で糖鎖分子と混合させることで表面に混合膜を形成し、この上でレクチンの認識を行った。基板表面の電位を変化させることによりレクチン認識がより高感度化することを確認した。この現象の起こる理由については、来年度以降引き続き検討を行い、最適化していく。昨年度までに非特異的な吸着を抑える材料として採用してきた短鎖のトリエチレングリコール末端分子が、適度に緩い密生度の膜構築を行うという実験事実を活かし、抗原抗体反応の酵素標識・電気化学検出の際の、膜材料として採用した。形成された単分子膜は、抗原抗体反応や酵素標識にまつわる各種分子類による非特異的な吸着は完全に抑えることができ、その一方で、酵素反応により生じる電気化学活性種は膜内を透過できるので、分子一層で篩のように使用できることを確認した。
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