本研究では、ソフトインターフェースの2次元状態の極限モデルとして高分子単分子膜を取り上げ、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて各種環境処理および各種環境下(高温、高湿度、有機ガス等)で分子レベルでの観察を行い、ソフトインターフェースの分子レベルでの挙動を明らかにすることを目的として検討を進めている。本年度は、以下の結果を得た。 1.Langmuir-Blodgett法で作成したイソタクチックポリメチルメタクリレート(it-PMMA)の2次元折りたたみ鎖結晶の融解挙動を、サンプルを予め所定の温度で熱処理した後、室温で観察する方法(バッチ法)で検討し、3次元結晶に比べて30~100℃と大きく融点が低下していることを見出した。さらに、本年度新たに導入した環境対応型AFMを用いて融解挙動をin situで直接観察することを試み、分子レベルで融解挙動をin situ観察することに成功した。in situ観察では、バッチ処理では不可避である後結晶化の影響を受けないため、(1)2次元結晶の真の融点がさらに低温であること、(2)結晶融解の分子レベルでの詳細な構造変化が観察できること、が明らかになり、in situ観察が極めて有効であることがわかった。今後はさらに、熱処理条件や分子量依存性等の検討を進め、結晶中での高分子鎖のパッキング構造についても明確化して行きたいと考えている。 2.PMMAとポリノニルアクリレートのブレンド単分子膜を検討し、低表面圧では均一で、高表面圧では、一方の成分が下層で、もう一方の成分がその上に積層した階層的な相分離構造を可逆的に形成することを見出した。さらに、均一一相領域を詳細に観察することで、ブレンド単分子膜中での一本の高分子鎖のコンフォメーションを初めて明確に観察することに成功した。高分子2次元膜中での分子の状態を直接観察できることになった訳で、2次元状態の高分子の挙動を研究する上で極めて有効であると考えられる。
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