本研究では、材料表面へのタンパク質の吸着とそれを介した細胞接着を同一のパラメータで評価することで、初期接着挙動を解析するデバイス創製を目的としている。細胞の接着挙動解析に関しては、基板へ吸脱着した物質の物理特性を検出できる水晶振動子マイクロバランス(QCM-D)を用いた。 細胞の全く接着しないPMPCブラシを選択し、QCM-D基板上に細胞接着部位と、細胞非接着部位を作り分けることを第一の目的とした。パターン化基板の作製においては、開始剤固定化金基板からpoly(MPC)(PMPC)ブラシを表面開始原子移動ラジカル重合(SI-ATRP)法によって重合した。PMPCポリマーブラシ表面を静的接触角(SCA)、高感度反射赤外分光(SI-ATRP)法、分光エリプソメトリーにより解析した。Figure 1に示す細胞接着部位のサイズは50μmと同じであり、細胞-細胞間距離が、50μm と100μm と異なる2種類のフォトマスクを用いてPMPCブラシが形成された基板に真空紫外線(VUV)を照射しポリマーブラシをエッチングし、細胞接着部位を作製した。その後、2.0×104cells/cm2の密度で細胞を播種し一晩DMEM10%FBS、1%pc/sm中、37℃、5%CO2で培養し、リンス後、位相差顕微鏡で様子を観察した。ギャップが異なるパターンで異なる細胞接着およびD-Fプロットの挙動が観察された。詳細に観察すると、たんぱく質の吸着挙動はほぼ同じプロットとなっているが、その後の細胞接着挙動に大きな違いが認められる。顕微鏡により細胞形態は、ほぼ同じである。しかし、細胞がたんぱく質の吸着した材料表面への接着強度が異なることを示している。このように細胞-細胞間の相互作用が、細胞接着強度に影響を与えることを定量的に示すことが可能となった。
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