ソフト界面で起こるダイナミックな現象の一つにローリングがある。本研究では、細胞親和性リガンドで修飾したソフト界面上で起こる細胞のローリング現象を詳細、かつ、動的に把握し、その特性ゆえに発揮される機能を、新たなバイオマテリアル開発へと応用する。これまでに、幹細胞表面レセプターに対する抗体を固定化したソフト界面において、組織幹細胞を精密に分離できる現象を見出した。本研究グループにより、(1)種々のリガンド固定化ソフト界面における細胞表面レセプターの吸脱着反応の物理化学的解析、(2)細胞分離システムとしてのソフト界面構造の評価、を計画している。 昨年度新たに導入したImagEM EM-CCD高速度カメラにより、CD34陽性モデル細胞、CD34陽性モデル細胞、および、骨髄由来間葉系幹細胞が、作成したリガンド固定化カラム中での細胞ローリング速度の定量化が可能になった。その結果、細胞の非特異的吸着によりカラム中で停止する細胞フラクションが多く存在することが明らかとなった。そこで、昨年は富山大学北野教授との共同により、非特異吸着を効率よく抑制できると期待される両親媒性ベタインモノマーのブラシ構造をATRPにより構築した。その結果、非特異吸着がほぼ確認されないまでに減少するとともに、カラムからの溶出率(細胞回収率)が飛躍的に向上した。さらに、その結果、細胞溶出パターンもシャープなものに変化した。そこで、昨年まで行ってきた抗CD34抗体固定化カラムにより分離した細胞フラクションの骨分化能力の検討に加えて、抗CD90抗体固定化カラムにより分離した間葉系幹細胞のサブフラクションの心筋分化特性について検討を行ない、CD34に認められた傾向と同様の傾向が認めている。心筋分化の効率を安定に評価するために、分化能力の高いP19CL6細胞株を用いてその分化特性との相関の検討を行う予定である。
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