光センサータンパク質であるアナベナセンサリーロドプシンとトランスデュサーの発現を、これまで報告されている手法を用いて何度も試したが、予期されたほどの量を得ることができなかったため、アナベナセンサリーロドプシンを発見したグループに連絡を取り、新たな発現方法を調査した。その結果、培養液の組成を変えたり、大腸菌の破砕方法を変更したり、精製段階のカラムを最適化することで、測定可能な量の発現に成功した。その試料を用いて、時間分解熱力学量や反応機構の決定を行うため、過渡回折格子法で反応ダイナミクスを測定した。アナベナセンサリーロドプシンでは、光反応によって拡散係数変化を示さないことが分かった。このことは、発色団の変化以外のタンパク質部分としての変化が少ないことを反映している。一方でアナベナセンサリーロドプシンにトランスデュサーを加えた溶液では、吸収変化では観測できないダイナミクスを検出し、これをトランスデュサーの解離と再結合ダイナミクスと結論付けた。すなわち、アナベナセンサリーロドプシンは過渡的にしかそのトランスデュサーとの結合能を変えないことになる。初めて反応機構についての議論を行うことに成功したと言える。現在、この発見を更に詳細に調べる研究を行っている。
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