揺らぎと生体分子の機能との関係を明らかにするために、過渡回折格子法を用いることで、機能に直結する反応スキームを明らかにし、そうした過程における揺らぎに関する種々の熱力学量測定を可能にしてきた。例えば、揺らぎが大きいと考えられるループ領域が、機能に関係した反応に重要と思われる例を、FKF1と呼ばれる青色光センサータンパク質の反応に見出した。また、体積揺らぎと関係する圧縮率の時間分解測定のために、時間分解体積変化の圧力依存性を用いた、新規な高圧システムを設計・作製することに成功した。青色光センサータンパク質PixDの体積膨張過程を表す信号の圧力依存性から中間体の体積揺らぎを、基底状態からの差として検出した。タンパク質の構造揺らぎが反応過程においてダイナミックに変化する様子が、初めて捉えられるようになった。また、熱容量や熱膨張係数の時間分解測定を行うことでも、反応中間体におけるエネルギーや体積揺らぎが増大している証拠を得ることができた。その他にも、一分子検出によるFRET信号を解析する新しい手法を開発し、テロメア構造は揺らぐことでいくつかの構造を取ることを明らかにした。
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