計画研究
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のドナーおよびアクセプターとなる非天然アミノ酸をタンパク質にそれぞれ導入して、FRET測定によってドナー・アクセプター間の距離およびその分布を調べ、タンパク質の特定部位における構造揺らぎを計測できる手法を確立することを目的として研究を行なった。モデルタンパク質としてマルトース結合タンパク質(MBP)を用いた場合、N末端にFRETのドナーとなる蛍光標識アミノ酸を導入しつつ、様々な内部部位にアクセプターとなる非天然アミノ酸を導入して、蛍光寿命測定からFRET効率とドナー・アクセプター間距離およびその分布の分析を行なった。また、一分子測定に適用可能なFRETアクセプターとなる新たな蛍光標識アミノ酸を設計・合成し、実際にタンパク質の様々な部位に導入できることを見い出した。この新規蛍光標識アミノ酸はMBPの溶液中での一分子測定に使用可能であること、及び、タンパク質の構造揺らぎの測定に応用できることを明らかにした。また、FRETのドナーの代わりにルシフェラーゼを用いることで、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)によって、同様の分析が可能となることも示した。一方、蛍光標識アミノ酸を抗体のN末端部分に導入した場合に、抗原非結合状態では抗体断片内部のトリプトファンによって消光されるが、抗原の結合によって消光が解消されて、抗原を蛍光変化によって検出できることを見い出した。これは、抗体断片の抗原結合部位の揺らぎを利用することで可能になったと考えられる。また、特定部位のアミノ酸を他の天然アミノ酸や様々な非天然アミノ酸に簡便に置換する手法の開発を行ない、タンパク質の構造やその揺らぎに対するアミノ酸置換の影響を効率良く解析できる手法を確立した。
2: おおむね順調に進展している
非天然アミノ酸の導入技術を用いたFRETによるタンパク質構造揺らぎの測定方法の確立、および、タンパク質揺らぎの制御に向けた様々な非天然アミノ酸の導入ともに、おおむね順調に進展している。また、蛍光標識アミノ酸を導入した抗体断片の揺らぎに基づいた抗原検出法が新たに見い出され、本研究成果の診断薬等への実用的な応用の可能性も示された。
今後も引き続き計画に沿って研究を推進する。また新たに得られた知見に基づいて、蛍光標識アミノ酸を導入した抗体断片の実用化についても検討し、その際に必要となる非天然アミノ酸導入タンパク質の大量合成法の開発も行なう。
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