研究概要 |
1.リン脂質(DMPC)およびPEG系界面活性剤(C_<12>(EO)_n,n=23)からなるハイブリッドリポソーム (HL-23)を用い、ヒト前骨髄性白血病(HL-60)細胞に対するアポトーシス誘導へのラフトの関与についてin vitroで検討した。HL-23を添加すると、HL-60細胞膜の流動性を増大した。蛍光脂質含有HL-23は、短時間でHL-60細胞膜に集積することが分かった。さらに、HL-23は、白血病細胞に対して、細胞膜上で脂質ラフトのクラスターを形成し、アポトーシスシグナル伝達を活性化させることが初めて明らかになった(Chem.Lett.,39,1291(2010))。 2.HL-n(n=21,23,25)の細胞膜をターゲットとする制がん機構について検討した。HL-nは、種々のがん細胞に対して顕著な細胞増殖抑制効果を示し、アポトーシスを誘導することをin vitroで明らかとした。さらに、HL-nは膜流動性の大きながん細胞に選択的に融合蓄積した。がん細胞膜の流動性とHL-nの制がん効果との間に相関性が認められ、「がん細胞膜の揺らぎが制がん効果に関与する」ことを初めて明らかにした。以上のことより、がん細胞膜をターゲットとする新しいHL-nのがん治療に向けて一般化が期待できる(ACS Med.Chem.Let.,2,275(2011))。 3.HL-23に抗生物質のゲンタマイシン(GM)を封入したGM-HLを創製し、新しい筋ジストロフィー治療を検討した。筋ジストロフィーモデル(mdx)マウスの体内動態観察において、骨格筋の炎症部位へのHLの蓄積を確認した。また、mdxマウスを用いたGM-HLの治療実験において、GM-HLの高い治療効果が確認され、mdxマウスへのGM-HLの副作用はみられなかった。GM-HLは、新しい筋ジストロフィー治療薬として期待できる(Biol.Pharm.Bull.,34,712(2011))。
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