研究実績の概要 |
1)リン脂質(DMPC)およびPEG系界面活性剤(C12(EO)23)からなるハイブリッドリポソーム(HL)のヒト肝臓がん(HepG2, Huh-7)細胞および正常肝臓細胞(HC)に対する、がん抑制機構と膜流動性との関係について詳細に検討した。HLは、肝臓がん細胞に対して、融合蓄積し、細胞増殖を選択的に抑制した。一方、HLは、HC細胞に対して、細胞増殖に影響を与えなかった。さらに、HLは、膜流動性の大きな6種類のがん細胞に対して、顕著な増殖抑制を示し、アポトーシスを誘導した。また、細胞膜の流動性とがん抑制効果との間に良好な相関性を示した。従って、がん細胞膜の揺らぎを標的とするHLのがん抑制機構の一般化が可能となった。(Biochem. Biophys. Res. Commun., 418, 81 (2012) ) 2)リン脂質(DMPC)およびPEG系界面活性剤(C12(EO)23)からなるハイブリッドリポソーム(HL)を用い、細胞脂質組成に与える影響について検討した。MALDI-TOF MS 解析により、HL処理したがん細胞における細胞内のスフィンゴミエリン(SM)とエーテル型リン脂質の総量の減少およびセラミド(Cer)の増加を観測した。これら脂質は、全て細胞死シグナルを含む様々な情報を細胞内へと伝達する機能を有する構造体「カベオラ」の構成成分である。以上の結果は、HLが細胞膜の組成を変化させ、その結果細胞膜上のシグナル伝達機能体のカベオラ構造も変化させていることを示している。細胞死のシグナルはこうした非典型的カベオラより発生している可能性がある。(Bioorg. Med. Chem. Lett., 22, 1731 (2012))
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