研究概要 |
本研究では、湾曲した拡張π電子系を有するフラーレン内部の高次π空間に常磁性金属原子を取り込んだ金属内包フラーレンを鍵物質とし、その高効率で高選択的な化学修飾法の開発を行うと共に機能性金属内包フラーレンを合成することを目的とする。得られた機能性金属内包フラーレンを超分子的に配列し、磁性-伝導ハイブリッド素子へと展開する。電子的、磁気的特性に優れた金属内包フラーレンを自在に配列し、集積化することができれば、次世代のスピンナノデバイスへの応用の可能性が飛躍的に高まると考えられる。この集積化の手段として、申請者は化学修飾による機能化が有効であると考える。 常磁性内包フラーレンを大量合成し、合成した内包フラーレンを用いて化学反応性の解明と共に化学修飾による誘導体の合成を行った。具体的にはスピンの形式の異なる以下3種類の常磁性内包フラーレンを合成した。(1) 炭素ケージ上にスピンを有する内包フラーレンLa@C_<82>、(2) 内包原子上にスピンを有する内包フラーレン[Sc_3N@C_<80>]^<*->や[La_2@C_<80>]^<*->、そして(3) ケージと内包原子の両方にスピンを有する内包フラーレンCe@C_<82>やGd@C_<82>。これらを大量に合成し、我々が開発した簡便分離法を用いて効率的に精製を行った。次にこれらの内包フラーレンに対し光ケイ素化反応、カルベン付加、1, 3-双極子付加反応、Diels-Alder反応等を用いた化学修飾を行い、金属内包フラーレン誘導体の合成を行った。さらに、合成した誘導体について各種スペクトルおよび電気化学等の測定から、金属内包フラーレン誘導体の電子的特性や酸化還元特性などを明らかにした。
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