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2011 年度 実績報告書

活性小分子の内包された球状π空間の創製と物性制御

計画研究

研究領域高次π空間の創発と機能開発
研究課題/領域番号 20108003
研究機関京都大学

研究代表者

村田 靖次郎  京都大学, 化学研究所, 教授 (40314273)

キーワードフラーレン / 内包フラーレン
研究概要

C60を出発物質としてフラーレン骨格に穴を開け、その開口部より小分子を導入し、さらに開口部を元通りに閉じる手法は最も明快な内包フラーレンの合成法である。これまで我々は有機合成の手法を用いて、新しい内包フラーレンの選択的な合成法を開拓し、H2@C60, H2@C70, (H2)2@C70, He@C60, He@C70の大量合成を報告してきた。今回、フラーレン上の開口部が加熱条件により自発的に拡大する新しい開口フラーレンを設計し、水単分子を内包したC60の合成を行った。
C60とピリダジン誘導体との熱反応と引き続く一重項酸素との反応により12員環開口体を合成し、水の存在下N-Methylmorpholine N-oxideとの反応により新しい13員環開口体を合成した。次に、9000気圧の高圧条件下トルエン中120 °Cにて加熱することにより、この開口部を「動的制御」によりin situで拡大し、水分子をほぼ定量的に内部に挿入した。その後、開口部を修復することにより、水分子内包C60の合成を達成した。
得られたH2O@C60の構造は、単結晶X線結晶構解析によりニッケルポルフィリンとの分子錯体として決定された。内包された水分子のプロトンの位置は実験的に決定され、OH結合はニッケルの方を向いていた。また13C NMR測定からは、内包された水分子とフラーレン骨格との間に弱い磁気的相互作用が存在することがわかった。一方、UV-Vis, IRならびに電気化学測定の結果、水分子とC60の電子的な相互作用は非常に小さく、この水分子は疎水性のサブナノサイズの空間に閉じ込められた水素結合をもたない構造であることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

フラーレンC60は内径約3.7 Ǻの中空構造をもち、その空間はH2, H2O, CO等の小分子を内包するのに最適な大きさであるが、従来の物理的な手法ではこのような分子を内包したC60を合成することはできなかった。C60を出発物質としてフラーレン骨格に穴を開け、その開口部より小分子を導入し、さらに開口部を元通りに閉じる手法は最も明快な内包フラーレンの合成法である。これまで我々は有機合成の手法を用いて、全く新しい内包フラーレンの選択的な合成法を開拓し、H2@C60, H2@C70, (H2)2@C70, He@C60, He@C70の大量合成を報告してきた。今回、フラーレン上の開口部が加熱条件により自動的に拡大する新しい開口フラーレンを設計し、水単分子を内包したC60の合成を行った。また、開口フラーレンではフラーレンのπ共役系に直接官能基を導入できるという特色を活かし、これを利用した有機薄膜太陽電池デバイスを作製した。

今後の研究の推進方策

本研究では、小分子の可逆的な出入りが可能な開口C60ならびに開口C70、さらにそれらの開口部を閉じた小分子内包C60ならびに小分子内包C70について、特異なπ空間としてのフラーレン内部ならびにπ空間内部に完全に隔離された内包単分子の性質を解明し、さらに内包された活性小分子による外側の三次元π電子系の物性制御をも試みることを目的としている。
すなわち、π空間に閉じ込められた孤立水素単分子のオルトーパラ変換・水素2分子の結合組み替え反応、またこれらの同位体効果を検証する。また、不対電子や双極子を有する活性小分子をπ空間内部に閉じ込め、外側のπ電子系の蛍光特性・酸化還元特性の制御を行う。さらに、金属イオンをπ空間に閉じ込める手法を開発することにより、イオンセンサー等の物性発現を検討する。加えて、開口フラーレンのπ電子系を平面π電子系で拡張することによってより広いπ空間を創製し、それらの薄膜の発光特性ならびにトランジスタ特性を制御することを行う。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] A Single Molecule of Water Encapsulated in Fullerene C602011

    • 著者名/発表者名
      Kurotobi, K.; Murata, Y.
    • 雑誌名

      Science

      巻: 333 ページ: 613-616

    • DOI

      DOI:10.1126/science.1206376

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A Photochemical On-Off Switch for Tuning the Equilibrium Mixture of H2 Nuclear Spin Isomers as a Function of Temperature2011

    • 著者名/発表者名
      Frunzi, M.; Jockusch, S.; Chen, J. Y.-C.; Calderon, R. K.; Lei, X.; Murata, Y.; Komatsu, K.; Guldi, D. M.; Lawler, R. G.; Turro, N. J.
    • 雑誌名

      J. Am. Chem. Soc.

      巻: 133 ページ: 14232-14235

    • DOI

      DOI: 10.1021/ja206383n

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Indirect 1H NMR Characterization of H2@C60 Nitroxide Derivatives and Their Nuclear Spin Relaxation2011

    • 著者名/発表者名
      Li, Y.; Lei, X.; Li, X.; Lawler, R. G.; Murata, Y.; Komatsu, K.; Turro, N. J.
    • 雑誌名

      Chem. Commun.

      巻: 47 ページ: 12527-12529

    • DOI

      DOI: 10.1039/C1CC15149E

    • 査読あり
  • [学会発表] 17員環開口部をもつ新規フラーレン誘導体の合成と性質2012

    • 著者名/発表者名
      桜井悠子、村田理尚、黒飛敬、若宮淳志、村田靖次郎
    • 学会等名
      日本化学会第92春季年会
    • 発表場所
      慶應義塾大学日吉キャンパス・矢上キャンパス
    • 年月日
      20120325-20120328
  • [学会発表] Synthesis of Endohedral C60 Encapsulating a Water Molecule2012

    • 著者名/発表者名
      Yasujiro Murata, Kei Kurotobi, Tomoko Nishida
    • 学会等名
      The 10th International Conference on Heteroatom Chemistry
    • 発表場所
      Obaku Plaza, Kyoto University
    • 年月日
      2012-05-20 – 2012-05-25
  • [学会発表] 水素結合をもたない水単分子の実現

    • 著者名/発表者名
      村田靖次郎
    • 学会等名
      第26回有機合成化学研究所講演会
    • 発表場所
      京都大学桂キャンパス
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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