研究領域 | 高次π空間の創発と機能開発 |
研究課題/領域番号 |
20108004
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安蘇 芳雄 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (60151065)
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研究分担者 |
辛川 誠 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (80452457)
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キーワード | 拡張共役系 / 高分子構造・物性 / 有機エレクロニクス / 先端機能デバイス / ナノ材料 / 分子エレクトロニクス |
研究概要 |
構造の明確な拡張π電子共役系化合物の利点を活かした、高次π空間の構築と解析および有機エレクトロニクスへの応用に向けた革新機能の開拓に関して、以下の研究を遂行した。 1.高いπスタック自己会合性と半導体特性を有する分岐型共役系のこれまでの研究展開を受けて、主鎖のβ位に置換基を導入して積極的にπ共役を阻害したポリチオフェンにおけるメモリー機能の探索を進めた結果、共役を切断したポリチオフェンを使ったサンドイッチ素子が、電圧掃引により電流値に履歴が現れる特徴的な挙動を見出した。 2.フルオロアルキル基の凝集効果による分子配列の制御と有機太陽電池への応用を目指して、フルオロエーテル基を導入したチオフェンモノマーユニットを合成し、3-ヘキシルチオフェンと組み合わせた各種ポリマーの開発に成功した。モノマー組成の変化に基づいてフルオロエーテル化フラーレン誘導体との相溶性の向上とモルフォロジー制御の検討を行い、バルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池において、良好なエネルギー変換特性が得られた。 3.フラーレン誘導体に代わる有機太陽電池のアクセプター成分の開発として、当研究室でFET用n型半導体として開発されている電子受容性π共役分子ユニットを組み込んだ、薄膜での多次元的な電子輸送が期待できる分岐型共役系の開発を行い、枝の共役長に依存した基礎物性および電界効果トランジスタや有機太陽電池の特性に及ぼす効果が明らかになりつつある。 4.分子エレクトロニクスに向けて、フルオレン置換オリゴチオフェン被覆分子ワイヤの開発に成功し、平面性の高い共役系の導電挙動を明らかにした。また、縮環シクロペンテン部にカルボニル基を有するn型オリゴチオフェン被覆分子ワイヤの開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多分岐型オリゴチオフェンを基盤として、大きなコンフォメーション変化に由来すると考えられる新しい概念の電子メモリー材料の開発に至った。フルオロエーテル基の凝集効果を利用するπ共役分子の配列制御は新たな方向への展開であり、バルクヘテロ接合薄膜太陽電池において新機軸の確立が期待できる。また、分子エレクトロニクスに向けた研究は、新しい現象が見いだされて来ており、さらなる展開を期している。
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今後の研究の推進方策 |
バルクヘテロジャンクション型薄膜太陽電池におけるフラーレンに代わるアクセプター成分の開発を目指し、電子受容性π共役分子ユニットを組み込んだ分岐型共役系の開発を積極的に推進する。 研究過程で至った新たな着想に基づいて、フルオロエーテル基の凝集効果を利用する半導体材料の開発とπ空間の構築による有機太陽電池の性能向上を目指す。 また、分子エレクトロニクス材料として、本格的な単分子素子の構築に向け、L被覆型単分子整流、単分子光電変換などの機能化分子ワイヤと三脚型アンカーの融合によって素子検証へと展開する。
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