芳香族性におけるトポロジーという新しい課題として、メビウス芳香族性の化学の展開を行った。オクタフィリンやヘプタフィリンやヘキサフィリンなどの環拡張ポルフィリンを非極性溶媒中で、プロトン化することにより、捻れた分子構造と明確な芳香族性を持つメビウス芳香族性が生成することを見いだした。また、[26]ヘキサフィリンを単に酢酸中で加熱するだけで、側鎖にベンゾピラン環が縮環した生成物が得られ、これがメビウス芳香族性をしめすことを明らかにし、このメビウス芳香族性分子の光物性を明らかにした。これらの成果は、国際的に非常に大きな反響を呼びつつある。また、環縮小ポルフィリンとしてサブポルフィリンの化学の展開も行った。まず、メゾ位にチエニル基を導入し、その後、ラレーニッケルで還元することにより、脱硫還元によって、メゾアルキルポルフィリンを合成した。これにより、純粋にサブポルフィリン骨格だけの電気化学特性や光化学特性を明らかにすることができた。また、大きな芳香環置換基をメゾに導入したサブポルフィリンの合成も行った。また、我々が独自に開発したC-H結合活性化型ホー素化反応を基に、ピロールやチオフェンやジピロメテンで架橋した環状ポルフィリン多量体を合成した。また、架橋部にポルフィリンオリゴマーを用いたポルフィリン多量体の合成も行い。最大ポルフィリン7量体の結晶構造を得た。これは、単分散のポルフィリン多量体として、結晶構造の確定した世界最大の分子である。この合成法の延長として、ポルフィリンが二箇所でピリヂンにより架橋された2量体、3量体を合成しその結晶構造が、大きく撓んだ構造であることを発見した。これを基に、ポルフィリン4量体では完全に環状になったポルフィリンチューブとでも言うべき、分子になるのでないかと創案し、関連の反応を調べたところ、環状ポルフィリン4量体ポルフィリンチューブの単離に成功した。
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