計画研究
本研究ではフタロシアニン及びその類縁体を用いて、(1)種々の摂動(非平面化・π拡張化)を加えたフタロシアニン類縁体の合成及び物性解明、(2)高次π空間創製を指向したフタロシアニン多量体の合成及び空間制御による相互作用変化の解明、(3)磁気円偏光二色性(MCD)測定を用いたπ電子系分子の電子状態解明の3つのテーマに沿って概念的に新しいπ電子系分子の創製に挑戦している。(1)では中心元素にリン、環外周部のベンゼン環のα位に硫黄元素を導入することで、Q帯吸収が近赤外領域まで長波長シフトすることを見出し、それぞれの元素が電子構造に及ぼす効果について理論計算の結果と併せて評価を行った。また尿素ユニットを組み込んだ拡張型類縁体では、結晶構造解析及び各種分光測定から中心金属のモリブデンの配位環境や電子構造について明らかにした。またこれまで合成がなされていなかったピロールユニットが5つからなるスーパーアザポルフィリンの合成を行い、結晶構造解析によりひだ状にピロールユニットが配列した構造を明らかにした。この分子では低対称型の類縁体も合成し、それに伴った吸収変化も観測した。(2)ではナフタレンユニットの1,4,5,8位でフタロシアニン類縁体が架橋された二量体の合成に成功し、この分子がナフタレン周りのねじれ方の違いにより二つの異性体として存在することを示唆する結果を得た。今後は構造解析及び分光測定によるユニット間の相互作用解明を行う。(3)では(1)(2)で合成したサンプルの測定に加えて、本領域メンバーのMCD測定も行い、新規のπ電子系分子の電子構造解明を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
これまでに合成を計画していた分子の合成には成功しており、またその電子構造解明もMCD測定を含めた各種分光測定及び理論計算、電気化学測定により行っている。得られた分子及びその物性の多くはこれまでのフタロシアニン化学では報告の無かったものであり、研究計画書の目的に述べた「最先端のフタロシアニン研究をさらに発展させる」という目標は達成できている。また最終年度に向けて、これまでに得られた結果はπ空間という分野でさらに展開しうるものであり、一部は領域内の連携により実際に発展研究へと展開できていることから、当初の計画以上に進展していると言える。
本領域研究最終年の次年度は、現在合成研究を行っているテーマを継続して行うとともに、これまでに得られている化合物の物性及び電子構造に関する知見をまとめて比較及び評価することで、π電子系分子としてのフタロシアニン化合物の位置づけを新たにする。また領域内にとどまらず、フタロシアニン類縁体を用いた各応用研究を指向して、最適な分子設計指針を示すことが出来るように、研究成果のまとめを行っていく。(3)で推進してきたMCD測定を用いたπ電子系分子の電子構造解明は領域内外の共同研究により、フタロシアニンだけでなく、他のπ電子系分子にも有効であることを明らかにしてきた。今後さらに適用可能な化合物群を広げるために、知見の蓄積を継続して行っていく。
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