昨年度の検討で設計に成功したアミノ酸部位を有するπ電子系配位子を用いて種々の金属錯体を合成し、そのペプチド固相合成反応への適性をスクリーニングした結果、プラチナ、ロジウム、ルテニウム錯体が使用可能であることを見出した。これらの錯体の逐次連結を固相担体上で行い、各反応ステップにおける生成物の質量分析から、シークエンスの制御されたπ電子系金属錯体アレイを構築できることを実験的に裏付けた。生成物を担体から切り出し後、SECで精製を行い、5量体までの単離を達成した。 これまでの検討から、環状銅ポルフィリンダイマーが金属内包フラーレンLa@C_<82>を取り込むとホストゲスト間に強磁性的なスピン相互作用が働く一方、二つの銅ポルフィリン部位をさらに架橋してLa@C_<82>をホスト内に封じ込めると相互作用がスイッチしてフェリ磁性的になることを見出している。この現象のより深い理解のために、モデル化合物のDFT計算を共同研究として行つた。その結果、二つの銅ポルフィリン部位の架橋前では、銅ポルフィリン同士はハの字型になり、La@C_<82>は銅ポルフィリンの中心からずれた位置で接触する一方、架橋後では銅ポルフィリン同士は平行となり、La@C_<82>は銅ポルフィリンの中心で接触することが示唆された。架橋後のホスト・ゲスト複合体はエネルギー的には不安定であり、ゲストの解離・会合がおこる平衡状態では実現不可能であることから、ゲストの封入がスピン相互作用のスイッチに決定的な役割を果たしていることが分かった。
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