研究概要 |
π電子系金属錯体アレイの自己集合について、錯体モノマーを用いて予備的検討を行ったところ、黄色のPt(II)とRh(III)錯体モノマーの等量混合物をトリフルオロ酢酸存在下で溶媒流去することによって、赤色の固体が得られることを見いだした。発光スペクトルやXRD測定の結果、赤色はPt間に形成された金属間結合に由来することが明らかとなり、複数の金属錯体混合物中で自発的に自己選択的集合が進む珍しい系であることが分かった。次にPt(II),Ru(II),Re(I)の三種類の異なる金属錯体から構成される錯体アレイのシークエンス異性体を三種類(Ru-Pt-Re,Ru-Re-Pt,Re-Ru-Pt)作成し、その分子物性や自己集合能について比較検討した。その結果、Re-Ru-Pt三連子が他の二つの異性体に比べ高いゲル形成能を有することが明らかとなった。Re錯体の配位子部位と類似の構造を有する合成中間体がゲル化能を有することから、三連子中におけるRe錯体の位置がゲル化能に大きな影響を与えていることが示唆される。また、この合成中間体は溶媒の含水量に鋭敏に呼応したゲル化挙動を示すことも明らかとなった。これとは別に、基盤上にπ電子系配位子を積層した後Ceの原子ビームを照射することにより、配位子が金属イオンをサンドイッチした構造の常磁性金属錯体が合成できることを見いだした。興味深いことに、既存の溶液法では合成が未報告の構造についても、本手法で作成可能であることが示唆された。
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