本研究では、自己集合性のポルフィリンが与える高次のπ空間にフラーレンなどのπ系分子を包接・配列させることによって、新規の機能性π複合体を構築することを目的としている。これまでピリジル基を導入した環状ポルフィリン二量体のニッケル錯体(Ni_2-CPD_<Py>)およびフリーベース体(H_4-CPD_<Py>)とフラーレンC_<60>のπ複合体について、原子レベルでの超分子構造、光化学ダイナミクス、C_<60>の規則的な配列に沿った比較的高い電荷移動度を明らかにしてきた。当該年度は、得られた知見に基づいて、これらのπ複合体の光電変換特性を評価した。π複合体の溶液を貧溶媒で希釈してナノクラスターを形成させ、電気泳動によって透明電極上に修飾した修飾電極を用い、溶液型有機太陽電池を作製した。光子電流変換効率IPCE値はNi_2-CPD_<Py>の場合最大4%、H_4-CPD_<Py>の場合最大17%であった。H_4-CPD_<Py>がより高い効率を示した理由は、H_4-CPD_<Py>とC_<60>のπ複合体がより高次元に組織化されたクラスターを形成することおよび電荷分離の効率が高いことによるものであると考えられる。 Ni_2-CPD_<Py>について、C_<70>の包接挙動についても調べた。結晶中での包接錯体の結晶構造では、楕円球形をしたC_<70>がポルフィリンに対して縦向きの配向で包接されたものと、横向きの配向で包接されたものの二種類が存在することが確認された。C_<70>とポルフィリンの相対配向が縦向きである結晶構造は、これが世界初である。 さらに、C_<60>やC_<70>の包接の安定化のために架橋基が伸長された新規二量体、ポルフィリンのπ共役系が拡張された新規二量体、有機溶媒やポリマーとの親和性を高める置換基を導入した新規二量体などを合成した。
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