本新学術領域研究で合成される高次に組織化されたπ空間系分子を走査型トイネル顕微鏡(STM)により分子分解能で観察し、走査型トンネルスペクトロスコピー(STS)により分子内コンダクタンスを精密に計測することにより、π空間系分子の新しい電子機能を明らかにすることを目的としている。また、無電解めっきを用いて作製したギャップ長5nmのナノギャップ電極に、π空間系分子を埋め込んだ分子デバイスを作製することを目的としている。本年度は、アルカンチオール自己組織化単分子膜上の金属内包フアラーレンの分子分解能STM像を観察し、密度汎関数法により求めた分子の波動関数と比較することにより、金属内包フラーレンの配向状態を明らかにした。次に、Current Imaging Tunneling Spectroscopy(CITS)法を用いて、金属内包フラーレン内の電子準位の空間分布を検討した。その結果、内包金属を介したトンネル現象がおこることが示唆された。さらに、高電界を金属内包フラーレンに加えた際の分子の配向変化を分子分解能STM像により可視化することに成功した。分子修飾フラーレンの分子分解能STMでは、絶縁性の嵩高い修飾基があると明瞭なSTM像を観察することが難しいことを明らかにし、次年度以降に分子分解能STM観察に用いる分子構造に関する指標を得た。今年度の研究成果により、金属内包フラーレン分子スイッチ機能の起源を把握することができたので、来年度はナノギャップ電極を用いた分子配向スイッチを創製することを目指す。
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