研究概要 |
本新学術領域研究で合成される高次に組織化されたπ空間系分子を走査型トンネル顕微鏡(STM)により分子分解能で観察し、走査型トンネルスペクトロスコピー(STS)により分子内コンダクタンスを精密に計測することにより、π空間系分子の新しい電子機能を明らかにすることを目的としている。また、無電解めっきを用いて作製したギャップ長5nmのナノギャップ電極に、π空間系分子を埋め込んだ分子デバイスを作製することを目的としている。本年度は、分子分解能走査型トンネル顕微鏡(STM)像から、アルカンチオール自己組織化単分子膜(SAM)上に物理吸着した単一金属内包フラーレン分子の最高被占有分子軌道(HOMO)、最低未占有分子軌道(LUMO)を反映したSTM像を観察し、DFT計算の結果と比較することにより、分子の配向状態を決定できることを明らかにした。また、単一金属内包フラーレン分子上で走査トンネル分光(STS)測定を行うことにより、HOMO, LUMO,フェルミレベルなどのエネルギー準位を見積もった。さらに、新たな電子材料としての応用が期待される14個のπ電子に起因した芳香族化合物であるトリベンゾサブポルフィンについて、ホウ素上にアルキル基を置換したトリベンゾサブポルフィンを京都大学大須賀研究室にて合成して頂き、分子分解能STM/STSを用いて分子配向およびエネルギー準位の評価を行った。その結果、トリベンゾサブポルフィン誘導体の分子分解能STM像から、HOMO-1の分子軌道を観測した。また、トリベンゾサブポルフィン誘導体上のSTS測定から、トリベンゾサブポルフィンのHOMO, HOMO-1に起因したピークを観察した。
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