本研究では、脂質分子の自己集積によって形成される人工細胞膜に、高次π空間を形成する種々の機能素子を三次元的に集積して、ナノデバイスとしての機能発現を目指した。本年度の成果を以下にまとめる。 1. フラーレンの高次集積化が可能な人工細胞膜の開発 C60やC70等のフラーレンが、人工細胞膜としての脂質二分子膜ベシクルに集積化できることを明らかにした。フラーレン集積化の効率については、リン脂質、合成ペプチド脂質、セラソーム形成脂質等、種々の脂質を用いて形成されるベシクルで比較検討し、評価した。フラーレンの膜内での存在部位を制御するための脂質を新たに設計し、その合成を行った。 2. カーボンナノチューブの高次集積化が可能な人工細胞膜の開発 カーボンナノチューブを人工細胞膜の表面に集積化することを目指して、オリゴヌクレオチド鎖を膜表面に提示できる人工細胞膜を開発した。カーボンナノチューブは、一本鎖あるいは二本鎖DNAによって水溶化できることが既に報告されており、これによりカーボンナノチューブを人工細胞膜に集積化できる準備が整えられた。 3. シアニン色素会合体の高次集積化が可能な人工細胞膜の開発 人工細胞膜としてのセラソーム中に、シアニン色素の会合体が集積化できることを明らかにし、二種類のシアニン色素会合体が提供するπ空間では、有効なエネルギー移動が達成できることを明らかにした。
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