計画研究
生体分子は進化の中で最適化されたπ空間の制御系であり、蛋白質などのナノ反応場が精緻な制御を可能にしている。とりわけ光受容蛋白質は、レチナール、クロロフィル、フラビンといった分子のπ電子系を制御することでユニークな色や反応、機能を産み出しており、ボトムアップ型の高次π空間を創製するにあたってのゴールともみなすことができる。本研究では、蛋白質による特異な波長制御、反応制御、機能制御に着目し、遺伝子改変によって変異を導入した光受容蛋白質に対して、赤外分光法などの分光学的手法を駆使した実験研究によりメカニズム解明を目指している。本年度は以下の成果を得ることができた。ロドプシンの生体π空間制御では、これまでに我々のグループで発見した色変化をもたらすプロテオロドプシンのループ領域のアミノ酸変異を分光学的手法により解析した結果、変異がプロテオロドプシンの部位特異的であることを明らかにした。また、クロライドを結合するハロロドプシンとフォボロドプシンについて、赤外分光を用いた詳細な構造解析により、結合の特異性を明らかにすることができた。さらに新たに発見された光センサー機能をもつロドプシンの詳細な構造解析を行った。光合成反応中心の生体π空間制御では、蛋白質内部に結合した水分子の信号を帰属することに成功した。フラビン蛋白質の生体π空間制御では、Jαヘリックスの役割を変異蛋白質を用いた構造解析により明らかにするとともに、その構造変化が生物種によって異なることを見出した。これらの成果も含め、11編の原著論文を世に出すことができたが、これらはいずれも生体π空間の特異性に迫る実験研究と位置付けることができる。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (43件)
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