研究概要 |
本研究では,π電子豊富分子が,高次構造体として組織化することで特異な相互作用が生じることに着目し,組織化構造におけるπ電子豊富分子の機能性に焦点をあてる.天然型および非天然型π電子豊富分子同士の相互作用を探ることで,これまでの常識にない特異な物性・機能性を探ることを目的とするものである.本申請課題で最も困難が予想される新現象の発見については,すでに申請者のこれまでの研究により実現している.とくにπ電子豊富物質上での生体内関連物質の異常挙動などは世界的にも注目される発見であり,本申請課題の遂行によりその先導性をさらに確たるものとする.平成21年度は,生体内πスタック分子である核酸二重らせんミミックの合成法の進展と,ステロイド様骨格をもつ芳香族化合物の新規合成法の開発を行った. 核酸二重らせんミミックの合成では,大量供給を可能とする収束的合成法の開発を行い,機能性探索に資する合成法を確立した.液相中でのオリゴマー同士の連結法を用いたものである.ステロイド様骨格をもつ芳香族化合物の新規合成法としては,四環型ジグザグ縮環構造をもつクリセン誘導体の新規合成法を開発した.本法は,ジフオロアルケンの分子内フリーデルクラフツ反応,骨格転位反応さらには芳香族化脱水素反応を単一操作で行えるものであり,大量合成に適したクリセン誘導体の合成法を見いだした.この検討ではハロゲン置換基が結晶中での分子のπスタック充填構造を誘起することを見いだし,有機エレクトロニクスに資する新規化合物へと展開可能である.
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