ホタルによる黄緑色の発光は、酵素であるルシフェラーゼの中で発光基質ルシフェリンとATP、酸素が反応し、励起状態のオキシルシフェリンが生成し、基底状態に戻るときに生じる。この発光色は不思議なことに酵素であるルシフェラーゼのわずか1アミノ酸を変化させるだけで赤色に変化する。この仕組みを詳細に検討するためには野生型および発光色変異体の研究を併せて行うが必要となる。 これまでの研究により発光を終了させたAMPおよびオキシルシフェリン(OXyLH2)の立体構造決定を行ってきたが、オキシルシフェリンの結合状態が反対になっているものが観測されてきた。これはOxyLH2の構造が対称性が高いことからこのようなことが生じることが想像された。そこでこの問題を解消することを目的としオキシルシフェリンのチアゾール環の5位にメチル基をつけ、非対称となるMOxyLH2を用いて構造解析を行った。その結果、野生型では1.4A分解能で解析を行うことができ、反応が進行した後に生じると考えられる向きに結合していた。MOxyLH2のベンゾチアゾール環の5’位の酸素がルシフェラーゼと水素結合ネットワークを形成していた。この形成にはArg220、Asn231、Tyr257が関わっており、発光直前を模した反応中間体アナログとの複合体構造で観測された水を含めた水素結合ネットワークと同じであった。このことから、発光反応を行う上でこの水素結合ネットワークを保つことにより、オキシルシフェリンのrigidityを保つことが可能となり、黄緑色発光を行う上で重要なネットワークであることが示唆された。
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