研究領域 | 高次π空間の創発と機能開発 |
研究課題/領域番号 |
20108017
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安藤 耕司 京都大学, 理学研究科, 准教授 (90281641)
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キーワード | 電子移動 / プロトンポンプ / エネルギー変換 / 量子動力学 / 生体分子 |
研究概要 |
本研究では、生体分子中においてπ電子系が主要な寄与を示す量子移動諸過程の微視的機構を探るための基礎理論と分子シミュレーション手法を開発・応用し、これらが協同的に機能することで実現される生体エネルギー変換の動作原理を分子レベルで解明することを目的としている。具体的には、電子移動、酸素還元、プロトンポンプが協働する膜タンパクであるチトクロム酸化酵素の機能解明を大課題に設定し、そこへ至る小課題として、(1)銅イオン酸化還元中心の電子状態とダイナミクス、(2)プロトンポンプの経路探索と量子波束シミュレーション、などに関する基盤的研究を推進している。平成23年度の研究成果としては、タンパク質中の長距離電子移動経路解析の新手法の開発と応用、プロトン移動性分子結晶における協同的誘電相転移の機構解析、プロトンポンプの量子波束シミュレーション手法の開発と応用、原子価結合電子波束法の開発、などについて着実な進展があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フラグメント分子軌道法(FMO-LCMO法)を利用した長距離電子移動経路解析プログラムが完成し、モデル系についてのテスト計算において良好な結果を得て、原著論文の発表まで至った。現在は、現実的な電子移動蛋白質への応用を進めており、来年度には一定の成果を得ることが期待できる。また、プロトン移動性分子結晶の誘電相転移に関する研究も、今年度になって成果が出て、原著論文発表の他、多くの学会で発表し、有益な情報を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発してきた長距離電子移動経路解析プログラムを、より現実的な生体電子移動糸に適用していく。現在進行中なのは、光合成反応中心における電子移動である。その次の課題としては、チトクロム酸化酵素における電子伝達とプロトンポンプとの共役の解析を計画している。これらの応用計算の他に、電子移動経路解析の新しい手法の開発にも取り組む。
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