研究領域 | 海底下の大河:地球規模の海洋地殻中の移流と生物地球化学作用 |
研究課題/領域番号 |
20109003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
砂村 倫成 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90360867)
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研究分担者 |
山本 啓之 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 技術研究主幹 (30182645)
岡村 慶 高知大学, 総合科学系複合領域科学部門, 准教授 (70324697)
福場 辰洋 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋工学センター, 技術研究主任 (80401272)
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キーワード | 深海環境 / 海底熱水 / 熱水プルーム / 深海生態系 / 物質フラックス / 現場観測機器 / 微生物一次生産 / 炭素循環 |
研究概要 |
海底下熱水循環系「海底下の大河」が地球表層環境に及ぼす影響評価のため、生物、微生物、化学フラックスを調査した。本計画研究班では、伊豆小笠原海域にて5航海(白鳳丸KH11-05, 淡青丸KT11-26, KT11-29, よこすか YK11-07, NT11-10)、沖縄トラフにて3航海(YK11-10, NT11-17, NT11-18)を実施し、現場センサー類を用いた熱水プルーム探査、熱水プルームマッピング調査、微生物活性データ、動物プランクトン試料を実施した。この他に、地滑りによる海底下から海洋へのフラックス測定を目的として、日本海溝や小笠原海溝における2航海(YK11-E06, KR11-11)に参加しデータを取得した。 沖縄トラフ鳩間海丘にて実施された熱水プルームグリッドデータをもとに、熱水プルームの分布シミュレーションモデル化を実施し、その結果の正当性や問題点について議論した。また、プルーム分布モデル評価の目的で、1000m以浅の熱水系の代表として与論海穴、カルデラ構造の影響をうけない伊良部海丘でのセンサーを用いた熱水プルームグリッドデータを取得した。 沖縄トラフと伊豆小笠原海域の熱水プルーム試料を対象に、微生物密度測定、次世代シーケンサーを用いた16S rRNA遺伝子のdeep-sequencingを実施した。また、熱水プルーム中の微生物による一次生産の評価のため、放射性同位元素を用いた二酸化炭素同化速度やアミノ酸取り込み速度を測定した。 前年度に採取した沖縄トラフの動物プランクトン試料を用いて、動物プランクトン中の重金属や炭素および窒素の安定同位体計測を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度までに、研究対象の沖縄トラフ、伊豆ーマリアナ海域、インド洋の熱水プルームについて、計画中にあらたに発見された熱水系も含め、当初計画を遙かに超える多様な熱水プルームの実測データを取得できている。一方で、熱水フラックスを導き出すためのグリッド計測調査として期待していた自律型潜水艇を用いた調査では、天候不良や調査の船舶トラブルにより、データが得られなかった。一次生産を担う微生物関連の調査については、沖縄でのAUV調査での天候および機材不良に伴い、種組成解析の予定が少し遅れたが、微生物定量、活性測定については当初の予定どおり進行している。深海生態系の調査の中で、動物プランクトン調査については、昨年度のインド洋調査に引き続き、本年度は小笠原海域で試料を得ることができ、分析を含め順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
十分なデータを得ることができなかった自律型潜水艇の調査は、東日本大震災などに伴う航海計画の大幅な変更や公募航海実施までの期間の問題から、本計画において今後実施することはできないが、来年度に実施予定の公募航海を含め、そのほかに行われた航海を最大限に利用し、フラックス計測のためのデータ整理と解析を実施する。これらを含め、最終年度に向けて、データ解析とデータとりまとめに重点をおき、研究を推進する予定である。
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