計画研究
平成23年度は本研究の4年目にあたる。地球化学的手法および生物学的手法による年代情報を重ね合わせる研究を実海域で行うことを目的として、沖縄トラフ熱水活動域で無人潜水艇による潜航調査航海を行い、熱水性鉱石や岩石などの地質試料の採取と熱水域固有種の成体・プランクトン幼生の分布調査および採集をおこなった。地球化学的研究では、南部マリアナ海域から採取した試料を中心に年代測定を進めた。U/Th放射非平衡年代測定とESR年代測定の二つの手法から定性的に一致する結果が得られた。調査海域内の3つの熱水域から得られる年代は0~8000年と幅を持っており、背弧拡大中心からの距離をもとにして推定されるマグマ活動時期を反映している可能性が示唆された。またBMS掘削によって得られるコア試料の深さ方向に対する年代測定結果をもとにして鉱床成長速度の見積りが可能であることが示唆された。さらにESR年代測定の確度を向上させるために熱水域内外の放射線量データの実測を進めた。生物学的研究では、南部マリアナ海域から採集したアルビンガイおよびプランクトンサンプルの解析を進めた。ミトコンドリアDNAの塩基配列に基づく解析から過去約50万年間の集団の縮小、拡大や分断の歴史を推定した。初めてアルビンガイの着底直前個体をDNAバーコード解析により特定し、系統地理学的解析から予想された本種の高分散能力を裏付ける結果を得た。沖縄トラフの5つの熱水域でも定量生物採集を中心とする研究を展開し、熱水噴出域生物群集の多様性が沖縄トラフ南部における硫化物鉱床の多様化と関連していることを示唆する結果を得た。またサツマハオリムシについて日本周辺と北マリアナ海域の集団の遺伝的特性を比較したところ、日本集団の遺伝的多様性が低く両者の分岐は100万年以上前である事が示された。
2: おおむね順調に進展している
沖縄トラフ熱水域での潜航調査航海を実施し、同一熱水域からの地質試料と生物試料の並行採取を5つの熱水域で行うことができた。また試料の基本的解析および年代情報取得のための解析はおおむね順調に進んでいる。
最終年度である平成24年度は、これまでの研究を推進し得られた成果の総括と公表を進めていく。得られた年代情報の検討とその解釈を行うために、班内、班外の研究者とともに議論する場をこれまでより多く持つことを計画している。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (35件) 備考 (1件)
PLoS One
巻: 7 ページ: e32965
10.1371/journal.pone.0032965
Plankton and Benthos Research
巻: 7(in press)(未定)
Radiation measurements
巻: 46 ページ: 866-870
DOI:10.1016/j.radmeas.2011.05.007
InterRidge News
巻: 20 ページ: 50-54
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