計画研究
【鹿野田】加圧により分子配列を制御することによって、モット転移の臨界性を初めてスピン自由度で観測することに成功し、電荷とスピンの両方のチャンネルで同一の臨界指数を確認した。また、ゼロギャップ伝導体においてディラック電子の出現と電荷不均化が密接に関連していることが分かった。さらに、単一分子種伝導体に現れる110Kの反強磁性磁気秩序が圧力に極めて敏感であることが明らかとなり、磁気転移の特異な機構の存在をうかがわせる。【高橋】ゼロギャップ系物質α型ET213の高圧力低温領域でのNMR吸収線の測定からゼロギャップ状態近傍での磁化率の温度依存性を測定し、限定された温度領域ではあるが理論から示唆されている、温度に比例した磁化率らしい振舞いを明らかにした。また、一方、化学的圧力印加に相当すると考えられるSe置換体では磁化率の温度依存はET塩のそれと比べて急峻に減少することを明らかにした。また、Fフリーの圧力セルを用いて(TMTSF)2FSO3の圧力下でのF-NMRを行い、陰イオンのダイナミクスを調べた。陰イオンが高温で熱活性化型の温度依存を示すこと、その活性化エネルギーが圧力印加により増大することを明らかにした【小林】分子性導体における理論的研究として、α-(BEDT-TTF)213のディラック粒子における各分子の役割と動的性質、強磁場下で電子相関効果とディラックコーンの傾斜によりXY強磁性状態とKT転移が出現すること、動的分極関数にカスプ構造が出現することなどを明らかにした。さらにTMTSF塩の異方的超伝導における磁場効果、またTTM-TTP塩において多軌道混成によるエネルギーバンドを第1原理計算を用いて計算し電子相関による分子内電荷秩序を明らかにした。
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