研究領域 | 分子自由度が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
20110004
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
宇治 進也 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導物性ユニット, ユニット長 (80344430)
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研究分担者 |
大島 勇吾 理化学研究所, 加藤分子物性研究室, 専任研究員 (10375107)
妹尾 仁嗣 理化学研究所, 古崎物性理論研究室, 専任研究員 (30415054)
小形 正男 東京大学, 理学系研究科, 教授 (60185501)
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キーワード | 分子性固体 / 磁性 / スピン |
研究概要 |
・型構造の・-d相互作用系である電荷移動錯体(BDH-TTP)2FeX4は、極低温まで金属的伝導を示し、Feイオンは大きな磁性スピン(S=5/2)を持つ。Br塩は3.9Kで、Cl塩では0.5Kで反強磁性転移を示す。磁気抵抗測定で、両塩において磁性スピンのつくるポテンシャルによって伝導電子が散乱される現象を観測し、比較的大きな・-d相互作用が存在することを明らかにした。常磁性相では、両塩ともに1つのローレンツ型の共鳴線形をもつ電子スピン共鳴(Xバンド)が観測される(・-d相互作用による共鳴線の先鋭化)。Br塩の線幅は60K以下の低温で発散する傾向が見られ、反強磁性揺らぎによる臨界現象と理解できる。一方、Cl塩では発散傾向は見られず、g値と・Tが同様の温度変化を示す事から、Br塩より・-d相互作用が弱く、そのために結晶の異方性を反映した磁性がより顕著になっていることを明らかにした。(宇治) ・擬1次元TMTTF2Xの温度圧力相図において近年議論されている特異な低温磁気状態の圧力依存性について、異方性を取りこんだ2次元拡張ババードモデルに対する厳密対角化法による数値計算を行った。その結果、電荷秩序により局在スピン間の結合がより2次元的になり、有効超交換相互作用の次元性クロスオーバーが起き、スピンパイエルス状態が不安定化し反強磁性状態が安定化する機構を見つけた。(妹尾) ・巨大な負の磁気抵抗を示す鉄-フタロシアニン(Pc)化合物(TPP[FePc(CN)2]2)でのπ-d相互作用の発現機構が、不純物アンダーソン模型とは異なり、金森-グッドイナフ的な新奇なメカニズムであることを解明した。(小形) ・λ-(BETS)2FexGa1-xCl4(x=0.34)においてミリ波を照射すると、基底状態である反強磁性絶縁相も制御できる事が最近明らかになった。しかしながら、そのメカニズムはよく理解されていないため、輸送測定や数値計算などを用いてその基底状態の再検証を行ったところ、これまでの定説と矛盾する結果が得られた。そこで、これまでの結果をうまく説明できる、基底状態のモデルを新たに提案し、その絶縁化メカニズムを考察した。(大島)巨大な負の磁気抵抗を示す鉄-フタロシアニン(Pc)化合物(TPP[FePc(CN)2]2)でのπ-d相互作用の発現機構が、不純物アンダーソン模型とは異なり、金森-グッドイナフ的な新奇なメカニズムであることを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
典型的π-d系であるBETS系有機伝導体でFeイオンの3d電子スピンのESR測定と電気伝導度の同時測定用プローブを開発し、系統的な実験を行い、多くの成果を得ている。さらに関連する実験的、理論的研究も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
BETS系有機伝導体に限らず、様々なπ-d系、π-π系においても同様の測定を進め、スピンの自由度を利用した電子相の制御を成功させたい。また実験と理論との密接な交流を通して、解釈を深めて行きたい。
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