研究概要 |
3d元素等を結晶中に導入することで、大きな磁性を持つ有機導体が多く合成されている。この大きな磁性を担う局在電子(3d電子)と、伝導を担う有機分子軌道上の電子(π電子)との間に、大きな相互作用(π-d相互作用)を持たせることで、磁場誘起超伝導や巨大磁気抵抗など興味深い物性が発見されてきた。本計画研究では、分子の内部自由度の中で、スピンの自由度を積極的に利用する。(1)Feなどの局在3dスピンや局在πスピンを持つ有機導体に注目し、磁場中で、外部から高周波電磁波を加えることで、局在3d電子等の局在磁気モーメントの向きを反転し(電子スピン共鳴,ESR)、π電子が見る内部磁場を変動させ、π-d相互作用を起源とする物性(磁場誘起超伝導や巨大磁気抵抗など)を制御することに挑戦する。これは、単に「ESRの抵抗測定」に留まらない、局在するスピン自由度を利用した新規の電子相制御を目指すものである。 (2)様々な有機伝導体において、スピン自由度が物性に及ぼす新規現象を系統的に探索、そのメカニズムを解明し、スピンの自由度を利用した電子相の制御を狙う。 (3)π-d系有機伝導体をモデル化し、そのスピン状態と電子相との関連を理論的に解釈し、さらに現象予測を行う。
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