研究概要 |
(森研究代表者チーム)電荷秩序分子性物質の外場応答として、磁場効果を調べた。その結果、電荷秩序転移付近で、-50%以上におよぶ大きな正あるいは負の磁気抵抗を示す物質を見出した。磁場の角度依存性を測定し、この大きな磁気抵抗が軌道でなく、スピンに由来する効果であることを明らかにした。 (山田分担者チーム)新しい有機強相関電子系の構築を目指して、遍歴電子状態を発現するドナー分子に、(i) 非環状置換基(ビス(メチルチオ)基)による環状置換基(1, 3-ジチオラン環)の置換、(ii)二つのメチル基の導入、を施したドナー分子の合成に成功し、活性化エネルギーの小さい半導体的挙動や金属一絶縁体転移、低温領域で電気抵抗の上昇を伴った金属的挙動を示す分子性導体を見出した。 (西川分担者チーム)常磁性金属イオンに直接配位することができるTTF系伝導体として, aminoethylthlo-TTFから誘導されるシッフ塩基配位子を合成し, Cu(II)錯体および部分酸化塩を作製した。結晶中TTF部位がスタックしていたが半導体であり, 磁性はCu (II) イオンが支配的な常磁性であった。極低温では磁性イオン間に反強磁性的相互作用が存在したが, 伝導電子と局在スピン間に強い相互作用は確認されなかった。 (黒木分担者チーム)τ型有機導体における高い熱電効果及び磁性の起源を探るため、バンド計算に基づく理論モデル構築に着手した。今年度はヒュッケル近似によるバンド計算を行い、理論モデルを構築した。ゼーベック係数を計算した結果、実験値ほどではないものの、大きな値を得た。これは我々がこれまでに提唱している「プリン型バンド」によるものと解釈される。ただし、我々のヒュッケル計算で得られたバンド構造は過去のヒュッケル計算とは異なる部分があり、さらに詳細に調べるために第一原理計算に着手した。
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