研究概要 |
(森研究代表者チーム)電荷秩序分子性物質beta-(BEDT-TTF)_2PF_6は、260K以下で約100-120maicroA印加すると1-3KHzの電圧発振をすることを見出し、電流印加とともに線形に発振周波数が上昇することより、電荷秩序の集団励起であることを明らかにした。また、Fe(qsal)_2(HSO_4)(CH_3OH)金属錯体は、スピンクロスオーバと、アニオンー溶媒のプロトンダイナミクスに起因した誘電応答がカップルした系であることを見出した。 (山田分担者チーム)シスージメチル基を有するmeso-DMDH-TTPからは4.2Kまで金属的性質を示すAul_2塩が得られるのに対し、トランスージメチル基を有するキラルな(S,S)-DMDH-TTPからはMI転移を示すα-[(S,S)-DMDH-TTP]_2Aul_2が得られることを見出した。さらに、このキラル導体が示すMI転移は10-11.5kbarの静水力で抑制されることを明らかにした。これらの結果は、ドナー分子の立体化学の違いにより電子相関を制御できる可能性を示唆し、有機強相関電子系を構築する上で重要な知見となる。 (西川分担者チーム)常磁性金属イオンに直接配位することができる伝導体として、配位部位にシップ塩基配位子を用いた金属錯体である[Cu^<II>(saeTTF)_2]の部分酸化体の圧力下における電気物性を調べた。また、新しいTTF配位子として、4座および6座配位の配位子を合成した。6座配位を有する配位子はTTF部位を2分子含むマクロサイクリックな配位子であり、そのCo(II)錯体がスピンクロスオーバーを示すことを明らかにした。 (黒木分担者チーム)τ-型有機導体の第一原理バンド計算を行い、低エネルギー有効模型を構築した。この模型を用いてゼーベック係数を計算したところ、温度依存性、アニオン依存性について実験結果と定量的な一致をみた。このことから、τ-型有機導体の大きなゼーベック効果の起源はその特異なバンド形状にあることを結論した。また、山田チームによって新規に合成されたα-[(S,S)-DMDH-TTP]_2Aul_2の第一原理計算に基づく研究に着手した。
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